小夜啼鳥が愛を詠う

「あー、わかった。後で話そう。10時前には着くから。電話して?」

『野木、携帯電話持ってきてない。』
鼻をすすりながら野木さんが言った。

『……財布もな。わかった。俺が連れてく。』
明田先生がため息まじりにそう言った。

……野木さん、何も持たずに衝動的に飛び出した、ってこと?

『いい。明田さん、たまの帰国で忙しいだろうし。』

『……今の野木をほっとけるわけないやろ。』

2人の様子を聞いて、光くんがぼやいた。

「好きにしなよ。2人とも来れば?」

「……光くんが呆れてるから、適当に来て?じゃ。一旦、電話切るね。」

『うん。あとで。ごめん。』
野木さんは気恥ずかしげに電話を切った。


「めんどくさいなあ。何となく、後でもめなきゃいいな、とは思ってたけど……早すぎ。もう。」
光くんは、ぷりぷりと怒っていた。

「光くんの心配、杞憂じゃなかったね……。」

そう言ったら、光くんは憤慨した。

「別に春秋氏と野木さんのことなんか心配してないよ!そもそも、明田さんはともかく僕を式に呼ぶのが変なんだよ。野木さん、デリカシーなさすぎ!」

まあ、それは確かにそうかもしれない。

「……ごめん。光くん、出席する気なかったのに……私のために来てくれたのよね?……思えば、あの時既に、春秋先生も野木さんも、知ってたんだ……。」

竹原さんが私の父親だってことを。

しょんぼりしてると、光くんが言った。

「さっちゃんのせいじゃない。……僕が、心配なのは、さっちゃんが……また思い悩むんじゃないかってことだけだよ。」

……うん。

ありがとう。

光くんは、いつも、あおいさんと薫くんの次に、私のことを考えて心配してくれる。

「大丈夫……だと思う。なんだかんだ言って、私、そんなに傷ついてないから。むしろ正体のわからなかった実の父親がわかって……」
「うれしい?お兄さんで。」

言葉に詰まった私の心を見透かすように、光くんがそう言った。

「……うれしい……のかな?んー。嫌な気はしない。また逢えるかもしれないって思うと……楽しみ……?」

初めて言葉にしたら、何だか恥ずかしくなってきた。

逢いたい。

竹原さんにまた逢いたい。

昨日から何度も何度もそう思った……。

まるで恋したように……思慕してる……。