小夜啼鳥が愛を詠う

薫くんは不思議そうだったけど
「美味しいならいいでしょ?栄養も消化もよくなるんだし、いいこと尽くしよ。〆は、ぜんざいね。」

「……いや、確かに美味しいけど……変なの!」

薫くんは納得いかないようだったけれど、結局しっかり平らげた。

「ほな行くわ!ごちそうさま。桜子は10時でいいしな。光に迎えに来てもらいや。」

「うん。ありがと。いってらっしゃい。がんばってね。」
這うようにドアの外まで見送りに出て、手を振った。

薫くんは背を向けて歩き出して、また振り返って叫んだ。

「桜子!好きや!」

なに?突然。

ちょっと面食らった。

「……あ、りがと。」

このフロアには我が家しかないからいいけどさ……いや、でも、たぶん下の階にも聞こえちゃったんじゃないかな。

恥ずかしいけど、うれしいので一応お礼を言った。

薫くんは、ふんぞり返る勢いで大きく息を吸い、一気にまくしたてた。

「俺、絶対、大学合格して、四年間、京都で桜子と住むからっ!春になったら結婚しようなっ!!」

……京都……。

こんな時なのに、竹原さんの顔が脳裏に浮かんだ。

いかんいかん。

これって、プロポーズなのかな。

何度も結婚だの、同棲だの言われてるから、正直なところ、どういう類の言葉なのかわからない。

けど、薫くんが、私に宣言することで自分に檄を飛ばしていることは確かだ。

ちゃんと答えなきゃ。

勢い込んで答えようとして……はたと気づいた。

会社がある。

京都から神戸に通えってこと?

無理ー。

「大学を休学するように、会社も一定期間休めればいいんだけど。……妊娠する?産休と育休。2人産んでも4年間は休めないわ。」

真面目にそう答えたつもりだった。

でも薫くんは、ニヤリと笑った。

……あ……なんか……たくらんでる顔だ。

まさか、本気で妊娠させる気?

身構えた私に、薫くんは言った。

「会社のこと以外は異論ないんやな!?ほな、決まり。嫁入り支度始めてや。本気やからな。」

「……はぁい?」

どう返事したらいいかわからず、私は半信半疑でうなずいた。



薫くんを見送ってから、家に戻る。

「薫くんが大学合格したら結婚して京都に住むから、結婚準備始めろ、って。」

パパとママにそう報告したら、2人は顔を見合わせてほほえみ合った。