小夜啼鳥が愛を詠う

放さないでほしい。

このままずっとこうして抱いていてほしい。

まるでこれが最後の夜かのように、私は薫くんにしがみつき、絡みついた。

私という人間の存在理由を確かめたくて……薫くんに求められたくて……

もっと、もっと、もっと……




身体の限界を振り切って薫くんを求め続けた結果……真夜中に私は意識を失って、そのまま寝落ちしたようだ。

「……桜子。水だけ飲んどき。」

薫くんは私の身体の汗を拭い、パジャマを着せてくれたあと、水を飲ませてくれた。

いつもなら、水よりも唾液を飲ませて欲しいって思うんだけど……さすがに、喉がからから。

また脱水症状になったら大変だ。

「……もっと……。」

そうおねだりして、薫くんに何度も水を飲ませてもらった。

その度に、ちろちろと舌でくすぐられたけれど……もう……動けない……。

……完全に抱きつぶされた……。

薄れゆく意識の中、薫くんが額や頬に優しいキスをくれて、髪を撫でてくれることがわかった。


「ゆっくりおやすみ。俺のことだけ、考えて……俺の夢、見とき。」

……知ってるんだ。

薫くん、私が今日、遺伝子上の父親と祖父と……腹違いの妹と遭ったことを……ちゃんと聞いてたんだ。

幸せなのに、まぶたはもう開かないのに……なぜか、涙が頬をつたって何筋も流れ落ちた。

大好き……。

薫くん、大好きよ。

……なのに、なぜ……私のまぶたには竹原さんがずっといるんだろう。

これじゃ、「瞼の母」じゃなくて「瞼の父」だ。

変なの。

竹原さん……。

今、何をされてますか?

……奥さまと……ベッドで過ごしてらっしゃるのかな。

逢いたい……。

すごく、逢いたい……。

……これって……本当に、父親に対する思慕なんだろうか。

まるで、恋だ。

……実の父親ってわかっても……恋しさが消えない。

むしろ、募ってる。

……竹原さん。

逢いたい……。





翌朝はあわただしかった。

ママは大事な試合に出陣する薫くんのために、消化のいいお餅を焼いた。

「美味いけど、なんで、きなこもちを大根おろしと醤油で食べるん?」