小夜啼鳥が愛を詠う

「ごめんなさい。……何だか……竹原さんが……かわいそうで……。」

そう言ったら、パパは苦笑した。

「……そうか……。」

あ。
失敗したかも。

今の、パパ……ちょっと、傷ついた?

そんなつもりなかったんだけど……。

難しいな。

パパへの感謝も愛情も、絶対に変わらないんだけど……。


「ごめんね。」
ママがぽつりとつぶやいた。

慌てて私は首を横に振った。

あやまらないでほしい。

ママを責める気持ちなんて微塵もない。

ただ……竹原さんが……あの瞳が……忘れられない……。

あの時はよくわからなかったけれど、今ならわかる。

隠しようのない好意。

瞳が……好きだと言ってくれていた……。

そうだ。

竹原さんが光くんに言ってたあの言葉。

やっぱり桜に対する想いじゃなかったんだ。

ママと……そして、逢ったことすらなかった私への……愛情……。

胸が……疼く……。

逢いたい。

竹原さんに、逢いたい。

ただ、もう一度……逢いたい……。




夕食は、とても喉を通らなかった。

ママのお料理はいつも通りすごく美味しい。

美味しいんだけど……竹原さんも、かつてはママのお料理を食べたのだろうか……と、ついつい考えてしまって……。

「大丈夫?もっと話す?1人になりたい?……それとも、小門家に行く?」
お箸を置いた私に、ママが尋ねた。

「……わかんない。でも、今日は、いっぱいいっぱい。……また、明日、考える。」

そう答えたら、パパが渋々といった態で言った。

「薫くんに来てもらったら?……たぶん明日の試合のことで頭いっぱいだろ。お互い、気分転換になるんじゃないか。」

パパの珍しい提案に、思わずママと顔を見合わせた。

「明日は雨じゃない?」
「一応、昼までは小康状態のはずなんだけど。」

ママとそう言い合ってると、パパは少し機嫌を損ねたようだ。

私は笑顔を作ってお礼を言った。
「ありがとう。パパ。……たぶん、薫くん、喜ぶ。連絡してみる。」



薫くんは、明日の荷物を抱えて、すっ飛んで来た。

誰からも何も聞かされてないのだろうか……。

みんなが腫れ物に触るような扱いをしてくれるなか、薫くんだけがいつも通り。

優しさだけじゃない、激しさで私を翻弄した。

めくるめく快感に、私はいつも以上に夢中になった。