小夜啼鳥が愛を詠う

私の問いに、パパが答えてくれた。

「……理由はいくつかあるみたいだよ。でも一番大きな理由は、要人さんの奥さんが甲状腺癌になって……腸にも転移していたらしい。摘出手術は両方とも無事済んだけど、再発は間違いないし、たぶんあと5年も生きられないと言われて、さっちゃんに逢わせてあげたいと思ってるみたいだ。」

「え……。」

私の……おばあちゃん、ってこと?

「まあ、義人くんは、俺と、彼の奥さんに義理立てして、さっちゃんには逢わないつもりだったみたいだけどね……坂巻くんと朝秀くんが、さっちゃんと義人くんとのご縁を紡いだんだろうな。」

「……よくわからないんだけど、あの2人は、竹原さんの奥さまのお友達、なのよね?」

そう尋ねながらも、2人がずっと好きだった女性というのが竹原さんの奥さまなのだろうという確信があった。

パパは首を傾げた。

「うーん。友達以上だな。坂巻くんは義人くんの奥さんと遠い親戚で義理の兄妹らしいよ。奥さんが坂巻くんのお父さんの養子になったんだって。朝秀くんはもともと義人くんに憧れてたらしいし。」

「養子……。」

なるほど。

それで、坂巻さんのお寺の用事で、竹原さんの奥さまも坂巻さんと一緒に披露宴に遅刻することになったんだ。

……ううん……もしかしたら、奥さまの目につかないところで、竹原さんと要人社長が私と話すことができるように……坂巻さんが画策したのかもしれない……。

ちょっと待って?

じゃあ、あの桜……。

春秋先生がリトグラフにしたあの桜の木を愛したヒトって……竹原さん?

……だとしたら……

「竹原さんがあの桜に重ねたのは……ママ?」

びくっと、ママが反応した。

「……ママ……なんだ……。」

とても美しいのに、孤高を感じさせる桜だった……。
慣れない京都で独り生きるママを、竹原さんは、本当に……愛していたんだ……。

ううん、過去形じゃない。

竹原さん、今も、仕事場に飾ってるって言ってた。

たぶん、春秋先生のリトグラフを見て、ママや私を……想ってくださってる……。

涙がこみ上げてきた。

「さっちゃん……。」

たぶん泣き出しそうな私にどう声をかけたらいいのか困ってるパパに、思わず手を伸ばした。

パパはしっかりと両手で私の手を握ってくれた。

……たまらず、涙がぼろぼろっとこぼれた。