小夜啼鳥が愛を詠う

……かくいうパパもたいしたもんだと思う……どれだけ送金してもらっても1円もつかわず、全部残ってるって!

「竹原さんには?……本当に妊娠を隠して別れたの?」

さすがに手が震えてきた。

「そうね。妊娠どころか、別れも告げずに、突然姿を消したの。卑怯なことをしたわ……。」
ママの目が潤んだ。

「逃げたかったの?暴力でも振るわれた?」

そんなわけないってわかっていながら、私はそう聞いた。

「……優しかったわ。暴力なんて一度もなかった。真剣に私との将来を計画してくれてた。……でも、義人くんに私はふさわしくないって思ってた。」

「13歳年上だから?」

ママは首を横に振った。

「それ以前に離婚歴もあったしね。……何より、私では、義人くんのこれからの可能性を全て摘み取ってしまう気がしたの。」

……そういえば、最初の結婚相手がマザコンで離婚したって聞いたことあったっけ。

断片的にしかママの経歴がわからないから、ややこしいのよね。

「えーと、時系列を整理していい?ママの初恋はパパだけど、大学を出て関東に嫁いで離婚したのよね?それで京都に就職して、竹原さんと出逢って、私を妊娠して、神戸に戻ってパパと再婚したの?」

「正確には、横浜で1年結婚生活を送って離婚して、あと1年は東京の学園に勤めてたの。4月に神戸に一旦戻って、歌劇団の生徒さんの付き人やスターさんの会のスタッフをして、お正月明けから京都の学園で勤務したの。5年半。」

ママはそう言って、パパを見つめた。

いたわり合うように見つめ合う2人は、ママの長い放浪が無駄じゃないと確信しているようだけど……やっぱりずいぶんと遠回りしたと思うよ?

「それじゃ、竹原さんは?どうされたの?……フォローなし?時間薬?……受験生よね?」

「……受験勉強しながら探したそうよ。翌年の秋に、偶然お友達とパパのお店に来て……その時、さっちゃんの存在と、私の再婚を知って、諦めてくれたんだと思う。」

1年以上探してたってこと?

……その間の竹原さんの気持ちを考えると……泣けてきそう。

いかんいかん。

無理矢理背筋を伸ばす。

「それからずっと要人社長は年に何度かパパのお店を訪れ続けて、竹原さんはそれっきり……てことね。だいたいわかった。あ、でももう一つ、気になることがある。……どうして、今、私の前に現れたの?」