小夜啼鳥が愛を詠う

……聞かなくてもわかる気がした。

実の父親というヒトが寄越したものを、はじめて私に披露してくれるのだろう。



「おかえりなさい。……どうだった?野木さん、幸せそうだった?」
ママがいつも通りの口調でそう尋ねた。

「ただいま。うん。幸せそうだったよ。お式の間もずっと笑ってた。野木さんも……春秋先生も、笑顔だったわ。」

そうだ。
2人とも幸せそうだったわ。

……私も……光くんも……過敏になりすぎ?

この目で見てきた幸せな光景を信じるべきだ。

「おかえり。さっちゃん。……光くんが心配してた。たぶんいろんなヒトと逢って……さっちゃんが誤解して心を痛めてるんじゃないかって。」

パパは直球で来た。

「誤解……なの?」

「たぶん……ね。俺も誤解したから。」

パパはそう言って、ママに肩をすくめて見せた。

ママはうつむいたんだか、うなずいたんだか……ゆっくり下を向いた。


「まず、印象を聞いていい?要人(かなと)さん。どう思った?」

パパにそう聞かれて、私はちょっと驚いた。

本当に、ズバリと来たなあ。

社長の言うとおり、パパもずっと黙ってるの、苦しかったのかな。

「優しく接してくださったけど迫力があった。仕事では関わりたくない感じ。」

昔お逢いしたことがあるらしいことは……何となく言わなかった。

もし万が一、パパが知らなかったらと思うと、余計な波風を立てたくなかった。

「そうか。……じゃあ、義人(よしと)くんは?」

ドキッとした。

息を呑んでから、なるべく正直に言った。

「素敵だった。かっこよくて、優しくて、気さくで、気が利いて……一目惚れと錯覚するぐらい、無意識に目で追ってた。」

「……あ、そう。」
パパは鼻白んだようだ。

「う。ごめん。」
思わず謝った。

「別に謝ることじゃないわよ。」
ママが淡々とそう言った。

「……たしかに。」
パパはちょっとばつが悪そうに同意した。

そして、ちょっと咳払いして、仕切り直した。

「えーと、もう見当ついてると思うけど、ママは京都の学園に就職した時に彼らと出逢ってね。5年間と半年?」

ママが黙ってうなずいた。