小夜啼鳥が愛を詠う

……不倫……か。

ママが語らない過去は、やっぱり不倫だったってことなんだろう。

……あのヒトに対してはそこまでのモノを感じなかったけど、竹原さんにはすごく共鳴した気がした。

私の……腹違いの兄ということだろうか。



「1つ言えるのは……その時その時で、誰もが良かれと思って選んできた道の集約地がさっちゃん、ってこと。こんなにイイ娘さんに育ったんや、誰も悪くない。……と、俺は思うで?」

マンションの駐車場に車を停めてから、社長がそう言った。

「……ありがとうございます。確かに、誰に対しても恨みも怒りもありません。……竹原社長に幼少期にお会いしていたことも、足長おじさんみたいに折に触れて贈り物してくださったことも……愛情なのだろうと思います。」

そう言ったら、社長はちょっと笑った。

「さすがさっちゃん。俺の娘やったら、抱きしめて頭、撫でてやりたいところやわ。……肩ポン、までしかあかんらしいから、我慢するけどな。……はじめて竹原の親父さんがマスターの店に来たんは、まださっちゃんが産まれる前や。それからも、ずーっと、年に何度かお見えになってるらしいわ。さっちゃんや、夏子さんには逢わんと、マスターにだけ逢いに来とるってのが、な。……できたヒトやと思うわ。なんぼでも逢いに来れるのに今日まで逢うのを我慢した竹原もな。……むしろ、褒めてやって。」

社長はそう言って、助手席の鍵を開けて、私の肩にそっと触れた。

「行っといで。」

「……はい。ありがとうございます。」

常識や普通とは違うモノの見かた、考えかたを、社長は教えてくれた。

実の父親に捨てられた子じゃない。

離れて暮らしていても、ちゃんと愛されている。

それは確かなことなのだろう。

心細さも、不安もないと言えば嘘になる。

でもそれ以上に、私は、自信を取り戻してもらった。

愛されていることを、思い出させてもらった。

だから、泣かない。

まっすぐ前を見て、エレベーターに乗り込んだ。



帰宅すると、パパとママが居間にいた。

何だか仰々しい封筒や証券、通帳、それから……送り状の束を、テーブルに積み上げて。