小夜啼鳥が愛を詠う

……生存確認かしら?

「こちらこそ、よろしくお願いします。……よくわからないけど、私にはいくつもの選択肢があるんですね。」

そう言ったら、社長はほほえんだ。

「そやな。さっちゃんの思うようにしたらええわ。誰もそれを咎めへんし、責めへんわ。」

「……。……はい。」
黙ってうなずいたけど、慌てて返事し直した。

「まあ、さっちゃんのことやから、見当はついてるやろうし……ご両親や光の心配は杞憂かなとも思うけど。」

社長は前を見たままそう言った。

「見当は……どうでしょう。考えないようにしてるんですけど……。」

そう言ってから、ふと気づいた。

今こうして社長がそばに居てくれることも、偶然じゃないのかもしれない。

社長の言う通り……両親に聞けなくても社長になら聞けることがある。

……実の……遺伝子上の父親の出現を、育ての親はどう感じるのだろう。

知らず知らずのうちに、ため息をついていた。

まあ、そういうことだろう。

あのヒト……あの、優しげだけど本当は怖いワンマン社長が、私の父親……なんだろうな、って。

でなきゃ、こんなに光くんも……社長もあおいさんも、腫れ物にさわるような対応しないよね?

思えば、パパやママの様子もおかしかったかもしれない。

たぶん、今日のこの邂逅は……偶然じゃないのだろう。

……光くんの危惧した意味が、やっとちょっとわかってきた。

どこまでが偶発で、どこからが仕組まれたものなのだろうか。

野木さんは……春秋先生は……幸せな夜を迎える……よね?

「マスター、今頃どんな顔してるんやろな。」
社長がちょっとおどけて言った。

「……社長なら?どう思われますか?」
思わずそう聞いていた。

「俺?……俺がマスターの立場やったら、ってこと?……そやなあ、やっと肩の荷がおろせるってホッとするかもな。嘘はついてなくても、黙ってるのも、けっこう罪悪感あるもんやしな。……仕事の話は仕方ないけど、家族のことはなあ、例え体裁が悪い事実でも、受け入れて、乗り越えていきたいし、そうしてきたつもりやねんけど。」

「……そうですね。社長はそういうかたですね。」

社長らしいな。
すごく素敵。

まあ、社長自身は曲がったことも、浮気も不倫もしないだろうけど。