小夜啼鳥が愛を詠う

ますますよくわからない。

あおいさんは事情を推察してるけど、部外者ってこと?

「……帰宅して、大事な話を両親から聞けばいいんですか?」

そう尋ねると、あおいさんは真面目な顔でうなずいた。

「わかりました。じゃあ、済んだら、また来ます。薫くんにそう伝えてください。おばあちゃん、大事な帯、ありがとうございました。」

よくわからないまま、私は立ち上がった。

「さっちゃん、またね。」
おばあちゃんがひらひらと手を振ってくれた。

長い坂道を下るだけなので歩いて帰ろうとしたら、社長が車で送ってくれた。

「社長も、事情を推察してる部外者なんですか?」

そんな風に尋ねたら、社長は肩をすくめた。

「淋しい言い方するなぁ。……今は部外者かもしれんけど、家族と同然にさっちゃんの味方でありたいと思ってる。大丈夫やと思うけど、いつでも頼って?……マスターたちに言えんことでも俺が力になれることもあるやろし。」

……優しいなあ。

「あおいさんと社長は、たぶん同じ情報を共有してらっしゃるんでしょうけど……なんてゆーか、スタンスが違う気がします。お二人とも親身になってくださってるのはよくよくわかってて、すごくありがたいんですけど……。」

なんとなく感じてる違和感をそう表現してみた。

すると社長は、あっさりうなずいた。

「せやろな。……俺もあおいも、もちろんさっちゃんの幸せを願ってるのは間違いないけど、あおいは母親として光が、俺は友人として竹原が心配やから。……竹原、イイ奴やろ?」

突然出てきた竹原さんの名前に、ドキッとした。

「……まだそこまで、よく、わかりません……。でも、お父さまの要人さんと……中身はあまり似てらっしゃらない気がしました。」

「似とらんなあ。社長はギラギラしたワンマンで、会社の拡大に心血を注いだヒトで、息子に期待よりプレッシャーかけまくってきたヒトらしいわ。竹原がひねくれもせず、優秀なイイ奴に育ったのって奇跡かも。お母さんと妹さんの存在が大きいんやろなあ。」

社長はしみじみそう言って、それから私に言った。

「今夜、もし、うちにまた来るんやったら、何時になってもいいから連絡して。俺か、光か、薫が迎えに行くから。くれぐれも衝動的なことはせんときや。お家にいるならそれでいいから。いずれにしても、明日の薫の試合、来てやって。頼むわ。」