小夜啼鳥が愛を詠う

とりあえず、和室でおばあちゃんに帯を解いてもらい、着物を脱いだ。

「そういえば、もう1人、丸帯のお嬢さんがいらっしゃったんですよ。」

そう報告すると、おばあちゃんはニッコリほほ笑んだ。

「まあ、そう。素敵ね。日本舞踊を習ってらっしゃるのかしら?それとも、舞妓さん?」

「普通……じゃないか、裕福なお家のお嬢さんのようです。日本舞踊は……聞いてません。お着物は着慣れてらっしゃるようでした。……習ってらっしゃったのかしら。」

そんな話をしてると、あおいさんが廊下から声をかけた。

「さっちゃん、いい?」
「はぁい?」

障子を開けると、あおいさんがかしこまって座っていた。

「光から電話があって……。」

あおいさんはそこまで言って、ちょっとためらった。

何の話だろう。

「席を外しましょうか?」
おばあちゃんがそう声をかけた。

あおいさんは慌てて言った。
「やー、違うんです!ごめんなさい、お義母さんに気ぃつかわせてしもーて。……ちょっと大事な話があって……さっちゃん、今夜はおうちに帰ったほうがいいかな、って。」

「大事な話……?仕事関係じゃなくて、ですか?」

珍しく要領を得ない話し方をするあおいさんを見つめて、さらなる情報漏洩を促そうとした。

「あら。薫くん、がっかりするわねえ。」

おばあちゃんのつぶやきに、あおいさんが困った顔でうなずいた。

「そうなんよ。それ、忘れてた。一応、試合前日やしなあ。いや、でも、今回はさっちゃん優先で。」

「……よくわかりませんが……ヒトの生き死に関わりのない限り、薫くんを優先してあげたいです。負けたら終わりですし。」

そう言ったら、あおいさんはため息をついた。

「ありがと。さっちゃん。あの子の親として、すごくうれしい。ありがたい。ほんま、出来た嫁や。……でも……もう黙ってるの、限界。知ってて言わへんのと、騙すのとは違うわ。耐えられへん。」

「騙す?……あおいさんが?私を?」

意味がわからない。

わからないけど、あおいさんが誠実に向き合おうとしてくれてることはわかった。

でもそれがどうして、私の帰宅につながるというのだろう。

「話があるなら、どうぞ?薫くんが帰る前にでも。」

「いやいやいや。僭越やわ。推測で言うことでもないし。」

あおいさんはそう言って、後ずさりした。