小夜啼鳥が愛を詠う

「もうね、いろんなことに疑いだしたらキリがないんだよね。春秋氏が野木さんを選んだことすら、さっちゃんの存在がからんでる気がして。」

「……光くん……それって……」

野木さんに対する未練?

そういえば、もともと光くんって、春秋先生のこと、好きじゃないよね?

……もしかして、光くんは春秋先生に嫉妬してるのだろうか。

言葉にしなくても、私の疑惑は光くんに伝わった。

「……そんなんじゃないよ。そうじゃなくて!……あ~、もう……僕じゃなくて、さっちゃんのこと!」

珍しく光くんの語気が強い。

「私?」

「……心配なんだよ。……さっちゃんが。」

つらそうにそう言ってくれる光くんを、私はただただ見つめるしかできなかった。

意味のわからないまま、小門家の門前で降ろされた。

……飛び出して来ないところを見ると、薫くんはまだ帰ってないのだろう。

「お店に行ってくる。」

光くんは着替えもせず、そのまま行ってしまった。


「お帰り~。あれ?光くんは?」

おばあちゃんが迎えに出てくれた。

「……お店に行くそうです。」

そう伝えて、光くんの分の引き出物の大きな紙袋を玄関先に置いた。

たぶん、朝秀窯の焼き物も入ってるんだろうな……けっこう重い。

「なぁに?喧嘩でもしたの?珍しい。」

続いてやって来たあおいさんにそう言われて、私は首を傾げて見せた。

説明に困っていると、社長が言った。

「……おかえり。お疲れ。」

社長の声にも瞳にも、ただの外出からの帰宅に対するいたわり以上のものを感じた。

「……疲れました。社長のお友達のこと……事前にもうちょっと教えておいてほしかったです。」

珍しく私は、社長に甘えてそんなことを言ってしまった。

「逆に、身構えさせたくなかったんやけど……悪かったな。ごめん。」

社長はそう言って、大きな紙袋を2つとも持ってくれた。

「……重いな。光、これ、さっちゃんに持たせて、行ってしもたって?……後で説教やな。」

「家の前から玄関までだけです。あとは、ちゃんと持ってくれましたよ。」

慌ててそう言ったけど
「披露宴会場から車までだけ?……光くんらしくないわね。どうしたのかしら。」
と、おばあちゃんまで眉をひそめた。