小夜啼鳥が愛を詠う

テレビの向こうのアイドルに憧れるのとも、二次元の漫画のキャラクターに恋するのとも、はたまた椿さんのような色気のある男役の女性にときめくのとも、また違う。

確かに私は、竹原さんに強く惹かれた。

でも、だからと言って、これって恋じゃないよね。

奥さまも娘さんもいらっしゃるわけで、それに対して、特に胸が痛むとかそういうこともなかったし……。

……でも……仕事でまた逢えるかもしれないと思うと……私は……。

「心配だな。……さっちゃんも……薫も……。」
「光くん!?」

びっくりした。

何を言い出すの?

私……のことは置いといて、薫くんも、って……。

光くんは、ニッコリとイケズ~にほほ笑んだ。

「僕らと違って、薫は社交的だからね。楽しい京都での大学生活で、羽目をはずすこともあるかもしれない。お目付役もいないし。」

「……。」

否定できない。

信じてる……そう言うことは簡単だ。

でも、今日の私自身を思い出すと……同じことが薫くんの身に起こらないという保証なんてどこにもない。

薫くんは、カッコイイ。
かなり、モテる。

……新歓コンパで酔いつぶされてお持ち帰りとか……普通にあり得るだけに……うううう。

「やっぱり早々に結婚したほうがいいんじゃない?」

光くんの結論に、私は何も言えなくなってしまった。

結婚って、束縛するためにするものなのかな。

てか、そもそも結婚が束縛になるのだろうか……。



西宮に入る頃、光くんが長い重い沈黙をようやく破ってくれた。

「ごめん。ちょっと言い過ぎたかも。」

「……ううん。」

言われて当然だ。

「本当は、後悔してる。……昔、お兄さんにさっちゃんの存在を教えたこと。」

何の話?

「……単にお友達としてアルバムを見せたたけでしょ?」

光くんは前方を睨み付けたまま、小さくうなずいた。

「別にどうってことないんじゃない?……たまたま野木さんの結婚式でお会いしただけなんだし。」

いつまでも光くんが不機嫌なほうが、私には堪えるし、大問題だ。

でも光くんは、ため息をついた。

……なに?

何でそんな反応なの?