小夜啼鳥が愛を詠う

「まいら。食うけ?」

「うん!孝義くん、ありがとう!やったー!いただきまーす。」

まいらちゃんは、何の迷いもなくお皿を受け取り、パクパクと二口で完食した。

「孝義くん!」

竹原さんの奥さまが、慌てて坂巻さんの名前を呼んだ。

「ええやん。余ってるんやし。なあ?」

坂巻さんは、私と、それからまいらちゃんに同意を求めた。

私はうなずいて、それから、竹原さんの奥さまに会釈しておいた。

奥さまは動揺してらっしゃるらしく、硬質な微笑を浮かべて会釈を返された。

「お姉さん、ありがとう~。ママ、お姉さんと帯も草履もおソロねん!後で写真撮るねん。」

まいらちゃんがそう言うと、竹原さんの奥さまはパッと竹原さんのほうを向いた。

私の席から奥さまのお顔は見えなかったけれど……緊張感は伝わってきた。

てか、竹原さんの顔から表情、消えてる……。

恐妻家というよりは愛妻家さんに見えたんだけど……違ったのかな?


「……なんか、さっちゃん……誤解されてない?」

椿さんが声になるかならないかの小声でそう耳打ちした。

「そんな気がする……。」

どうしよう。







「誤解?そう?……僕も、さっちゃんが薫以外の男に目移りするのを目の当たりにして、けっこうショックだったけどね。」

披露宴のあと、車に乗ってから、光くんは淡々とそう言った。

「……目移りって……。」

反論したいけど、できなかった。

確かに自覚があるから。

竹原さんから目が離せなかったのは、本当のことだ。

「野木さん綺麗だったねえ……。ドレス3着ともシンプルなのに豪華で。まあ、さっちゃんはほとんど見てなかったけど。」

光くん……怒ってる……。

「見てたもん。白とピンクと赤……。」
「桜色と椿色だよ。入場の時に司会者が言ってたろ?……まあ、さっちゃんはテーブルの向こうのお兄さんに目も耳も集中してたんだろうけど。」

……ぐうの音も出ない。

「あの……このこと、薫くんに……」

恐る恐るそう言いかけて、光くんに睨まれた。

……ダメだ。

わかってる。
光くんが、薫くんを傷つけたり心配させるようなことをするわけない。

ただ、私に猛省を促し、今後よそ見しないように思い知らせたいのだろう。

ため息がこぼれた。