小夜啼鳥が愛を詠う

グループ会社や大企業の代表取締役も幾人もいらっしゃったけど……あまり大きすぎるところは、面識のないのに挨拶とか却って失礼よね。

スピーチの合間合間に、挨拶に回るヒトが増えたのを見計らって、私も立ち上がった。

いざ、出陣!

とりあえず、私自身がお電話や文書、メールでコンタクトをとったことのある会社の代表幾人かに挨拶をして回った。


テーブルに戻ろうかと踵を返すと、いつの間にか竹原さんがすぐそばにいた。

「……小門からメール来てた。顔つなぎして、って。……紹介するわ。」

「……社長から?どなたでしょう?」

ドキドキする……。

「成金社長。」
竹原さんは苦笑まじりにそんなことを言った。

「はあ……?」

よくわからないまま、竹原さんについて歩く。

……ふわりと鼻孔をくすぐる甘い香りに気づいた。

竹原さんの香りかな?

素敵……。

ついつい距離が近くなりすぎちゃう……。

これ、何の香りかしら。

くんくんと香りに気を取られてるうちに、竹原さんはどんどん前方へと進んだ。

……まさか……。

到着したのは、主賓客エリア。

嘘ー!

さすがに足が止まった私を、竹原さんは手招きした。

「そんな緊張せんでも。ほら、今、どっか行ってはるわ。」

そう言われても、その空席は……めちゃめちゃ大きな会社の社長!

確かに新興の会社だけど……竹原さん……成金って、そんな失礼な!

昨日ちょうど、そのグループ会社の資料を拝見したけどさ、子会社でも規模が違いすぎるのに……そこのグループのトップって!

恐れ多くて、とてもとても……。

「ご縁がなかったんですよ。戻りましょ。」
慌てて竹原さんにそう言った。

ら、低いイイ声ですぐ横から嘆かれた。

「……悲しいことをおっしゃる……。」

え?

この声……?

恐る恐る視線を移す。

声の主は、どう見ても見覚えのある、ダンディーな老紳士だった。

思わず、竹原さんを見た!

助けて~~~!

「挨拶挨拶。」

竹原さんは私の両肩を逃げないように捉えてから、社長に言った。

「学生時代の友人に紹介するよう頼まれました。古城桜子さん。」

あれ?

ワンマン社長で怖いヒトのはずなのに、すごく優しそう。

その瞳を見てるだけで、緊張がすーっとほどけた。