小夜啼鳥が愛を詠う

「かわいいぽっくりね。鼻緒に、桜の刺繍が入ってる。……ほら、これも、お揃い。」

そう言って、自分の履いている草履を指さした。

私の草履は赤いエナメル革に、蒔絵風に金彩で桜が描かれていた。
ママと光くんのおばあちゃんが相談して選んでくれたものだ。

「ほんまや!一緒!」
彼女はそう言って、ニコーッとうれしそうに笑った。

……うわぁ。
すっごくかわいい。

一人っ子の私には想像つかないけど……妹がいたら、こんな気分なのかな。

まあ、みゆちゃんも私のことを「お姉さま」と呼んでくれてかわいいけど……それとはまた違った。

「さっちゃん、裾が汚れるよ。……あ。開場したみたい。シャンパン飲み損ねたかな。」

いつの間にか、私の帯と袂を持ってくれてた光くんに、慌ててお礼を言った。

「ありがと。ほんと、大変。行きましょうか。」

差し伸べられた光くんの手につかまって、立ち上がった。

なぜか、竹原さんの娘さんも、光くんのほうに手を突き出して、ぴょんと立ち上がった。

「ん?君も?じゃあ、どうぞ。」

光くんは、彼女にも手をさしのべた。

うれしそうに、光くんにつかまってゆっくり歩く姿が、またすごーくかわいかった。

「……両手に花、やな。」
竹原さんが光くんをそうからかった。

「お兄さん、手ぇ空いてるなら、シャンパンもらってきてよ。」

光くんがそう指示すると、竹原さんは肩をすくめてから、騎士のように優雅なお辞儀をした。

「仰せのままに。……師匠。」

かっ……こいい!

ひや~!

多少呆れてる光くんと対照的に、私はときめくのをおさえられなかった。

「お兄さん?パパのこと、どうして『お兄さん』って呼ぶの?」

ゆっくり歩きながら、竹原さんの娘さんが光くんに尋ねた。

「ん?……じゃあ、君はどうして僕を『お兄さん』って呼ぶの?」

光くんは逆にそう質問した。

彼女は、そんなことを聞かれると思ってなかったらしい。

「……だって、私より年上の男のひとで、おじさんじゃないし。」

そう答えた彼女に、光くんは言った。

「僕も、君のお父さんとはじめてお会いした時、彼は僕より年上の男のひとで、まだおじさんじゃなかったよ。以上。」

……光くん……ちょっとイケズ?