小夜啼鳥が愛を詠う

何となく視線を感じて振り返った。

いや、振り返るまでもなく、なぜかわかっていた。

彼だ……と。


視線が絡み合う。

……こんなの、はじめて。

これは、いったい、何なんだろうか。

恋……じゃないよね。

わからない。

けど、私の中で……まるで血が騒いでいるよう。

彼も私も、微塵も動かなかった。

けっこう距離があるのに、私たちはただお互いを見つめていた。

たくさんのヒトが行き交う広い空間なのに、まるで2人だけが存在してるかのように……。



「さっちゃん。ウェイティングルーム行こう。シャンパン飲みたい。のど、かわいた。」

椿さんに声をかけられて、やっと私は我に返った。

「あ。うん。光くんは?」
「トイレちゃう?……あ!明田先生、行っちゃう。先、行くね!光くんと来て。」
「うん。わかった。……えーと、光くん……あ。いた。」

光くんは、人ごみを縫うように移動していた……ちょうど、あの男性のいる方向へ。

あっちにトイレがあるのかな?

私も、披露宴の前に行っておこうかな……。


……。

なんだかんだと理由をつけて、あの男性に近寄りたい自分に気づいた。

だって気になるんだもん。

開き直って、私は光くんを追った。


……え!?

光くんは、トイレではなく、まさにそのヒトに話しかけた!

笑顔!

2人とも笑顔になった!

知り合い!?

まさか……あ、そっか!

このヒトが、社長のお友達ってこと?



「さっちゃーん。名刺名刺。」

光くんが、じりじり近づく私に気づいて、手招いた。

私は心持ち早足で向かった。

「……先ほどは、ありがとうございました。」
彼が、そう言って私にほほえみかけた。

……胸が……いっぱいになった。

「いえ。私は何も……。光くんがスリッパをお願いしに行ってくれたんです。……あの……お嬢さまは?」
何とかそれだけ言えた。

視線だけじゃない、顔ごと、いや、身体ごと、このヒトに吸引されそう。

ふらついた私を、さりげなく、そっと光くんが支えてくれた。

「え?じゃあ、さっきの女の子、お兄さんの娘さんだった?……へえ~。どおりで……」

お兄さん?