小夜啼鳥が愛を詠う

……あのヒトは、春秋先生の関係者なのね。

坂巻さんのこともよくご存じのようだった……。
お2人よりは年輩に見えたけど……。

「げ。俺、一番前や……。」
「明田先生は野木の恩師枠なんでしょ。……私らは、その後ろかな。さっちゃん、行こう。」

何となく後ろ髪を引かれたけれど、言われるままについていった。



しばらくして、結婚式が始まった。

導師として最初に会場に入ってきたのは、何と、藤巻のおじさま!

びっくりした!

続いて、頬が緩むのを隠し切れないらしい春秋先生。

そして、介添えの女性に手を引かれて野木さんが入場してきた。

綿帽子からはお顔の半分ぐらいしかうかがえないけれど……野木さんはニコニコしていた。
新郎も新婦も、本当に幸せそうで……。


「イイお式やったね。」
椿さんは赤い目でそう言った。

「うん。2人ともずっと笑顔だったね。」
私もハンカチを目尻にあてながらそう返事した。

……仏式と聞かされてなかった私たちはお数珠を持ってなくて、少しばつが悪かったけれど。



会場を出ると、藤巻のおじさまに声をかけていただいた。

「桜子さん。今日はまた一段と艶やかで。……これ、家内から。荷物になるけど。」
「おじさま。ご無沙汰してます。わ!ありがとうございます。……まさかこちらでお会いできると思っていませんでした。」

玲子さんからのプレゼントは……お気に入りのお抹茶かな?

「新郎の希望は、うちの御山で猊下の導師での挙式やったんですけどね。折悪く海外から賓客がいらっしゃってるんですよ。会場の都合もあったので、今日は私がこちらで代役を務めることになりました。猊下はもうしばらくしたらお見えになります。」
「……そうだったんですか。藤巻くん、順調に勝ち進んでるみたいですね?今日も?」
「そうなんです。私もこれから駆け付けます。たぶん後半には間に合うと思います。薫くんのご活躍も聞いてますよ。……四国で戦えるといいですね。」

藤巻のおじさまは穏やかにそう仰った。

急いでるようには見えないのが、藤巻さんらしいわ。

伴僧の若い男性が気を利かせて藤巻さんを呼びに来た。

「それでは失礼します。桜子さん。また遊びにいらしてください。夏子さんにもよろしく。」

そう言って、藤巻さんは帰っていかれた。