小夜啼鳥が愛を詠う

「どうぞ。お友達とご一緒に。お先に行ってください。ありがとうございました。」
「しかもイケボ!かっこい~~~。」

思わず椿さんの腕を掴んで、引っ張った。

もう!
恥ずかしいってば!

目線で抗議してると、椿さんの言うところのイケメンはイケボで苦笑して会釈した。

……やっぱり、懐かしい気がした。

「では、失礼します。」

名残惜しげな椿さんを引きずるように、私はそう挨拶して廊下を進んだ。

「……見てる。ずっと見てる。……え~~~。誰!?あれ。オトナの男の魅力?カッコイイ~~~。」

椿さんの実況を無視して、振り向かずにウェイティングルームへと向かった。

私が教えてほしいよ。
いったい、誰!?

「あ!さっちゃん!あの子は?」
光くんがスリッパを持ったホテルのヒトとやって来た。

「お父さんが来られたから任せて来た。あ。スリッパ、持って行ってあげてください。あっちの明るい廊下です。」

ホテルのヒトにそうお願いして、私たちは明田先生のもとへ向かった。

明田先生はカクテルらしき赤いモノを飲んでいた。

「先生。何飲んでらっしゃるんですか?カンパリ?」

椿さんにそう聞かれて、明田先生はグラスをシャンデリアの光に透かすように掲げた。

「いや。モナコ。ビールとレモネードに、赤いシロップだな。」

ビールとレモン?

「おいしそう!……でも、お式、始まる前に酔っちゃダメですよ?」

「相変わらず、古城は真面目やなあ。……でも、酔わんとやってられんわ。人間国宝だの、文化勲章受賞者だの文化功労者だの……美術関係のお歴々をさしおいてスピーチやらされるとか。助けてほしいわ。」

そんな風にくだをまいていた明田先生のお顔が固まった。

見れば、噂の人間国宝、朝秀冬夏先生が車椅子でこちらに近づいて来られた。

「明田先生!やー、お久しぶりですなあ。この度は、愚息と嫁のために、遠いのにお呼びだてしてしまって、すんませんでした。」

明田先生は慌てて立ち上がり、冬夏先生にご挨拶した。

「ご無沙汰いたしております。このたびは、おめでとうございます。お身体の具合はいかがですか?」

「おおきにおおきに。……わしは、もういつ死んでもおかしないわ。癌も再発したし。切ったけど。いたちごっこや。」

そう言って、冬夏先生はカラカラと笑った。