「その言い方には語弊があるわ、春秋。フランスではフランス人と結婚しても国籍取得には影響ないし、日本は二重国籍を認めてないからフランス国籍を取ると日本国籍を放棄しなきゃいけないだけで……」
「どうしてフランス人になる必要があったんですか?パリ在住の日本人じゃあかんの?」
椿さんの素朴な疑問に、明田先生の頬が染まった。
「……結婚?……そっか。」
光くんは納得できたらしい。
春秋先生と野木さんは目配せし合ってる。
私と椿さんは、よくわからないまま。
沈黙を破ったのは、明田先生自身。
観念したように、言った!
「フランスでは、同性婚ができるからな。」
え……。
それって……。
再び訪れた静寂。
「Un ange a passe. 」
たぶんフランス語で明田先生がつぶやいた。
あんなんじゅぱす?
「天使が通った、って。……フランスの慣用句や。ほら、びっくりしてないで、何か言わないと、明田さん、困ってる。」
春秋先生のとりなしで、私は慌てて頭を下げた。
「おめでとうございます!」
「……うん。先生、おめでとう。どんなヒト?お相手も画家さん?」
椿さんがナイスなパスを繰り出した。
明田先生は照れくさそうに、お相手がかなり年下のパティシエだと教えてくれた。
光くんは穏やかな顔をしていた。
……さっきの涙は……やっぱり、彩瀬さんだったのだろうか。
控え室のドアが開き、野木さんのお母さまがご親戚をお連れしていらっしゃった。
私たちは、ご挨拶をして、控え室を辞去した。
ウェイティングルームに向かう途中で、椿さんを知っている歌劇ファンが出現した。
初夏の光が燦々と降り注ぐ廊下で、光くんと椿さんを待っている……と……
ドンッ!
背後から軽い衝撃を受けた。
びっくりして振り返る。
そこには、中学生ぐらいの女の子。
赤と白の地に四季の花が咲き乱れた明るい豪奢な着物を着た子だった。
「ごめんなさいっ!……草履が……」
彼女は慌ててお辞儀して謝った。
草履?
彼女の足許を見ると、なるほど……草履から鼻緒がすっぽりと抜けてしまっていた。
たぶんバランスを崩して私にぶつかったのだろう。
「どうしてフランス人になる必要があったんですか?パリ在住の日本人じゃあかんの?」
椿さんの素朴な疑問に、明田先生の頬が染まった。
「……結婚?……そっか。」
光くんは納得できたらしい。
春秋先生と野木さんは目配せし合ってる。
私と椿さんは、よくわからないまま。
沈黙を破ったのは、明田先生自身。
観念したように、言った!
「フランスでは、同性婚ができるからな。」
え……。
それって……。
再び訪れた静寂。
「Un ange a passe. 」
たぶんフランス語で明田先生がつぶやいた。
あんなんじゅぱす?
「天使が通った、って。……フランスの慣用句や。ほら、びっくりしてないで、何か言わないと、明田さん、困ってる。」
春秋先生のとりなしで、私は慌てて頭を下げた。
「おめでとうございます!」
「……うん。先生、おめでとう。どんなヒト?お相手も画家さん?」
椿さんがナイスなパスを繰り出した。
明田先生は照れくさそうに、お相手がかなり年下のパティシエだと教えてくれた。
光くんは穏やかな顔をしていた。
……さっきの涙は……やっぱり、彩瀬さんだったのだろうか。
控え室のドアが開き、野木さんのお母さまがご親戚をお連れしていらっしゃった。
私たちは、ご挨拶をして、控え室を辞去した。
ウェイティングルームに向かう途中で、椿さんを知っている歌劇ファンが出現した。
初夏の光が燦々と降り注ぐ廊下で、光くんと椿さんを待っている……と……
ドンッ!
背後から軽い衝撃を受けた。
びっくりして振り返る。
そこには、中学生ぐらいの女の子。
赤と白の地に四季の花が咲き乱れた明るい豪奢な着物を着た子だった。
「ごめんなさいっ!……草履が……」
彼女は慌ててお辞儀して謝った。
草履?
彼女の足許を見ると、なるほど……草履から鼻緒がすっぽりと抜けてしまっていた。
たぶんバランスを崩して私にぶつかったのだろう。



