小夜啼鳥が愛を詠う

「……ほんとは、光くんのママと2人だけの秘書室で、部屋は社長室なんだけどね。」

「うわぁ。未来の舅姑とずっと同じ部屋で仕事してるってこと?きっつー!」

「ふふ。仕事だけじゃないよ。夕べもうちに泊まったし。」
光くんがわざわざそう口出しした。

……たぶん、あおいさんが私をいじめてると思われたくないんだろうな。

「まあ、さっちゃんは生まれる前から家族ぐるみの仲やもんね。結婚は、薫くんが大学生になってから?」

椿さんにそう聞かれて、私は首を傾げた。

「わかんない。決まってない。でも、たぶん、そうなると思う。……なんか、おもしろいね。つきあってる期間が一番長い椿さんが結婚は一番遅くなりそう、って。」

「ほんまや!……で、野木は?いつからつきあってんの?」

椿さんにそう聞かれて、野木さんは照れくさそうに言った。

「よくわかんない。野木が好意を言葉で伝えたのは一年ちょっと前?あれをつきあい始めたと言っていいのかどうか……。」


「春秋は、俺に報告して、やっと、つきあい始めたと言ってる。だから、まだ、2ヶ月だそうだ。……久しぶりだな。」

パーティションの陰からそう言いながら現れたのは、明田先生!

「ちょっ!余計なこと言わなくていいから!明田さん!もう!」

続いて、紋付袴の春秋先生が飛び出してきた。

「わ!お久しぶりです!先生!……お元気そうですね。」
「や。やばいって。明田さん。一回りでかくなってる!……もう、小デブじゃなくて、立派なデブ!」
「……椿氏。さすがにそれは失礼。貫禄って言ってあげて。」

三人三様わいわいしてる私たちに明田さんは目を細めた。

……優しい、穏やかな、担任の先生の顔だ。

思えば、本当にイイ先生だったなあ……と、しみじみ思い出して涙ぐみそうになった。
ら、隣で光くんが、ほろほろと涙をこぼしていた。

「小門。何も泣かなくても……。」

明田先生、困ってる。

「……ほんとだ。はは。や。幸せそうで、よかったなあ、って。」

私がハンカチを手渡すと、光くんは慌てて涙を払った。

「ありがとう。」

光くんにそう言った明田先生の目も赤く滲んでいた。


「明田さんも結婚するんだって。日本国籍も捨てて。」

春秋先生がそう言うと、明田先生は慌てて付け加えた。