小夜啼鳥が愛を詠う

居間には、頭を抱えて二日酔いに耐えてるらしいパパと、おしゃべりしながら朝ご飯を食べてるママとおばあちゃんがいた。


「……おはよう。もしかして、パパとママも泊まったの?」
予定では、椿さんを送り届けてから、ママがパパを迎えに来て帰宅のはずだったと思うんだけど。

「おはよう。だって、パパが酔っ払って寝ちゃって、起きてくれなかったんだもん。」

「……ごめん。……おはよ、さっちゃん。」
パパが青い顔で、手を挙げた。

「さっちゃんも。何かお腹に入れないと。披露宴は13時?保たないわよ。」
おばあちゃんがそう言って、私にも朝食を出してくれた。

食後に、おばあちゃんとママが2人がかりで、私の髪を結い上げてくれた。

着付けは、いつも通り、おばあちゃんに手伝ってもらった。

だらりの帯は、完全にお任せ。

てか、重い!

でも確かに豪華……。

「ほんと……さっちゃんは、よく映えるわ。」
おばあちゃんは、うれしそうに何度もそう言ってくれた。

「……うん。綺麗よ。すっぴんでも充分だけど、まあ、せっかくの機会だし、ちょっとだけお化粧しよっか。」
そう言ってママが化粧品を取り出した。

「え。いいよ。」
普段ほとんどお化粧しないので、今回もファンデーションと口紅だけのつもりだった。

でもおばあちゃんまでが
「そうねえ。派手にする必要はないけど、形だけしとけば?」
と、賛同し、ママと色の相談を始めた。

……こうなると、とても逆らえない。

私は渋々2人のお人形になった。

睫毛を濡らす程度のマスカラと、和装の邪魔をしない陰翳程度のアイシャドー。

……ふーん?アイラインはしっかり入れるんだ……。

口紅は、濃い暗めの赤。

「昔は耳たぶもちょっと赤くしたんだけど……今は、誰もしてないのねえ。」

おばあちゃんはそう言ったけれど、ママもそれは知らなかったみたい。

「耳たぶ、ですか?」
と不思議そうに聞き返していた。


1時間以上かけて、やっと完成。

パパは涙ぐまんばかりに褒めちぎって、ママと帰って行った。


光くんと私も、光くんの運転する車で出発。

「帯、それだけ長いと大変だね。」

「うん……。長さより硬さがけっこう大変?甲虫になった気分。カブトムシとかクワガタとか。」