その夜遅くに帰宅したママに、新しい振袖を出してもらった。
今までで一番派手でおめでたい着物だった。
金地と白地に、鶴が舞い、桜が咲き乱れ、扇とのしが散りばめられていた。
ゴージャスだわ……。
「これなら、赤い丸帯かなあ。……すっごく派手になりそうだけど。」
「ふふ。お姫さまね。ほんと、さっちゃん、すごいわ。どんな着物でも負けないのね。歌舞伎の赤姫も似合うだろうなあ。」
珍しくママが親馬鹿だ。
「赤の本振袖もあるんだって。光くんのおばあちゃん。それが、赤姫になるんじゃない?……じゃあ、着付けはいつも通り、おばあちゃんに頼むってことでいい?」
「わかった。振袖一式お届けしてお願いしとくわね。」
数日後、ママが興奮気味に報告してくれた。
「真澄さんの赤い丸帯、今回の振袖にぴったりだったわ。まるで一緒に誂えたみたい。半襟と付け襟と、帯揚げ・帯締めは、真澄さんが選んでくださるって。バッグと草履は、」
「いいよ!あるもんで!まだすごく綺麗だし。……なんか、気合い入りすぎてない?」
思わずそう止めた。
ママは何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。
ただ、しばらくしてから
「結婚式は京都でしょ?白足袋のかたがたもいらっしゃるんでしょ?……京都のヒトの目は……怖いわよ……。」
と、ため息まじりに言った。
「うん。それは知ってる。お直しおばさんとか、お触りおばさんとか、見たことある。」
大学4年間通ったと言っても、私も光くんも、ほとんど神戸メインで生活してた。
だから、自分がされたわけじゃないけど……アンティーク着物の自分流の着こなしをボロクソに言ったり、突然無言で帯やおはしょりを直してきたり、着物が正絹か化繊か気になるらしく触ってくるヒトとか、わりといる。
「でもね、やっぱり新しいモノにしましょう。心配なの。」
ママは懇願するようにそう言った。
……何を心配することがあるんだろうか。
「そんなに心配なら、一緒に来ればいいのに。」
ついそう口走ったら、ママは悲しい顔になった。
よくわからないけど、傷つけちゃった?
「……ごめんね。ママは……場違いよ。」
むしろ笑顔を無理矢理つくって、ママは言った。
ゴールデンウィークが始まり、薫くん達のインターハイ予選が始まった。
たぶん最後の夏……。
今までで一番派手でおめでたい着物だった。
金地と白地に、鶴が舞い、桜が咲き乱れ、扇とのしが散りばめられていた。
ゴージャスだわ……。
「これなら、赤い丸帯かなあ。……すっごく派手になりそうだけど。」
「ふふ。お姫さまね。ほんと、さっちゃん、すごいわ。どんな着物でも負けないのね。歌舞伎の赤姫も似合うだろうなあ。」
珍しくママが親馬鹿だ。
「赤の本振袖もあるんだって。光くんのおばあちゃん。それが、赤姫になるんじゃない?……じゃあ、着付けはいつも通り、おばあちゃんに頼むってことでいい?」
「わかった。振袖一式お届けしてお願いしとくわね。」
数日後、ママが興奮気味に報告してくれた。
「真澄さんの赤い丸帯、今回の振袖にぴったりだったわ。まるで一緒に誂えたみたい。半襟と付け襟と、帯揚げ・帯締めは、真澄さんが選んでくださるって。バッグと草履は、」
「いいよ!あるもんで!まだすごく綺麗だし。……なんか、気合い入りすぎてない?」
思わずそう止めた。
ママは何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。
ただ、しばらくしてから
「結婚式は京都でしょ?白足袋のかたがたもいらっしゃるんでしょ?……京都のヒトの目は……怖いわよ……。」
と、ため息まじりに言った。
「うん。それは知ってる。お直しおばさんとか、お触りおばさんとか、見たことある。」
大学4年間通ったと言っても、私も光くんも、ほとんど神戸メインで生活してた。
だから、自分がされたわけじゃないけど……アンティーク着物の自分流の着こなしをボロクソに言ったり、突然無言で帯やおはしょりを直してきたり、着物が正絹か化繊か気になるらしく触ってくるヒトとか、わりといる。
「でもね、やっぱり新しいモノにしましょう。心配なの。」
ママは懇願するようにそう言った。
……何を心配することがあるんだろうか。
「そんなに心配なら、一緒に来ればいいのに。」
ついそう口走ったら、ママは悲しい顔になった。
よくわからないけど、傷つけちゃった?
「……ごめんね。ママは……場違いよ。」
むしろ笑顔を無理矢理つくって、ママは言った。
ゴールデンウィークが始まり、薫くん達のインターハイ予選が始まった。
たぶん最後の夏……。



