小夜啼鳥が愛を詠う

てか、野木さんって、そういうヒト、好きよね。
優しそうなのに、中身が屈折してるヒト。

明田先生も、光くんも……で?春秋先生もそうなの?

「でもだんだん意地張ってることが馬鹿らしくなってきちゃった。いつの間にか、私も好きになってたし。ま、いっか……って。」

ま、いっか?

軽い……。
そんなもんで、結婚するの?

何とも返事できない私を見て、光くんが野木さんに、それから私に言った。

「相変わらず野木さんは言葉で感情を説明するのが下手過ぎ。まあ、春秋先生は気が利くヒトだからくみ取ってくれるだろうけど。……さっちゃんも、そんな顔しない。野木さんの幸せそうな顔を見れば、わかるだろ?ただの言葉のあやだよ。」

野木さんの頬が赤く染まった。

……なるほど。

「ごめんなさい。誤解した。……うん。幸せそう。春秋先生、イイヒトだもんね。気持ちが通じ合ってよかったね。幸せになってね。」
私は心からそう祝福した。

野木さんは、こっくりとうなずいた。
「ありがとう。……うまく言えないけど……春秋先生が手間暇かけて野木の世話を焼いてくれるのが泣きたいほどうれしい。この状況が一生続くとは思えないけど、この気持ちを思い出すだけで一生幸せでいられる気がするから……。」

「クールだなあ。続くよ。春秋先生、ロマンティストだろ?一生、野木さんを、憧れのお姫さまでいさせてくれるよ。」

光くんにそう言われて、野木さんはちょっとほほ笑んだ。



2幕の夢々しいレビューが始まった。

椿さんのポジションが、じわじわと真ん中に近づいてきてる。
舞台の椿さんは、ほんっとうにかっこよくて……ますますセクシーワイルドダンディーな男役になってる気がする。
まだ新公学年なのにお髭とか似合いそうな男役の色気。

……すごいなあ。

いっぽう、我が道を突き進んでいた野木さんが、春秋先生の手でお姫さま状態……ってか?

さっきの光くんの言葉を反芻すると、何とも言えない気持ちになった。

野木さんがお姫さまに憧れてたって……私、気づきもしなかった。
冗談かと思ったら、本当だったんだ……。

昔、よく野木さんが私を「お姫さま」と揶揄してたのは覚えてるんだけどなあ。

……屈折してるよ……野木さんも。

お姫さまだった私は、いつの間にかバリバリ働くことを余儀なくされてるし。

3者3様、か。

ヒトの人生って、おもしろいなあ……。