小夜啼鳥が愛を詠う

キョトンとしてる私に、野木さんはため息まじりに繰り返した。

「明田さんじゃない。」

「え?ええっ?だって、フランスに行ったの……明田先生に逢いに行ったんじゃないの?てっきり、フランスでうまくいって結婚ってことになったんだと……え?……じゃあ、誰と結婚するの?」

言葉にすればするほど違和感を覚えた。

何?

じゃあ、フランスは?

え?

どういうこと?

「さっちゃん鈍いねえ。僕、だいぶ前から気づいてたよ。……何だかんだ言って、2人とも、惹かれ合ってたよね?最初から。」

光くんの言葉に、私はますますよくわからず、首をぶんぶん振った。

「誰?嘘?知らない!え?」

「あ。さくら女、パニクってる。……落ち着いて。小門兄も。イケズ言わないで。……深呼吸する?」
野木さんが私の背中をさすってくれた。

「それより!誰?結婚!誰とするの!?」

私は、野木さんの腕に掴まって、身を乗り出してそう聞いた。

「え?ホントにわかんないの?……さっきからずっと言ってるのに。普通に、春秋先生だけど。」

「ええええっ!?」

「さっちゃん、さすがにうるさい。しーっ。」

「さくら女、落ち着いて。」

立ち上がって驚いた私の手を、両隣から光くんと野木さんが引っ張って座らせた。

ちょっと待って!?
いつから?

え?

さっき、光くん、何て言った?

最初から惹かれ合ってた?

そうだっけ?

えええええ?

思い出せ。

あの日……チャリティー美術展で……。


「成人式の頃にはまだつきあってなかったよね?野木さんが意地張ってたように見えたけど。」
さらりと光くんがそう言った。

成人式!?

知らない知らない!

いや、確かに野木さんはわざわざ京都で着物を着付けたと言ってたけど……そういや、春秋先生が送り迎えしてたけど……それって、いつものことというか特別なこととは思わなくて、2人の仲の進展には気づかなかったわ。

「うん。ずっと気持ちは感じてたし、大事にしてもらってるのはわかってたけど……けっこう葛藤があってね。ほら、あのヒト、遊んでるくせに純情だから。忘れられない女性の存在も気になったし。」

遊んでるくせに純情……なんてワガママでめんどくさい……。