小夜啼鳥が愛を詠う

「すごいね。……で、どれに決めたの?」

「それは秘密。てか、春秋先生、凝り性だから気に入ったのなくて……結局オーダーメイドに落ち着いた。」

「え!?」
「……さすが……。」

絶句してると、野木さんは肩をすくめた。

「でも頼んだ店より野木のほうが縫製技術は巧いと思う。やっぱり自分で作るべきだったと後悔してる。」

「……いや……それじゃコスプレの衣装と変わんないから。しかし、春秋先生……すごいね。ドレス代はお祝いとか?」

まさかあの春秋先生が野木さんや明田先生に払わせるわけがない。

「お祝いって!」
光くんが珍しくそうツッコんできた。

「だって、ドレスをオーダーメイドでしょ?それとも、朝秀冬夏先生からのお祝い?」

重ねてそう聞くと、野木さんが首を傾げた。

「いや。いくら春秋先生が根っからのぼんぼんでも、一応ちゃんと売れ筋のアーティストだから。式も披露宴も春秋先生が出す予定。」

「え!?春秋先生、そこまでしてくれるの!?……すごい……。」

春秋先生ってば、野木さんの保護者のつもりなのかしら。

感心してると、光くんがくすくすと笑い出した。

「なぁに?」
気になって聞いてみた。

「いや、さっちゃん、たぶん、勘違いしてると思う。」

そう言って、光くんは野木さんの携帯をチョイチョイと横からいじった。

「勘違い?」

聞き返す私と、光くんの顔を、野木さんが交互に見て首を傾げた。

「小門兄?どういう意味?」

「……うん。ほら、これ。」

光くんが野木さんのスマホを指さした。

覗き込むと、そこには黒い燕尾服を着て、いわゆる「花組ポーズ」という独特な格好をしている春秋先生が写っていた。

「春秋先生!うーん、さすがに、似合ってるわね。黒燕尾。イケメンは何着ても、変な格好してもカッコイイわねえ。……光くんも着てみたら?野木さんと明田先生の結婚式で。」

私がそう言うと、光くんは吹き出して笑い、野木さんはマジマジと私を見た。

なに?
この変な空気。

しばらくの沈黙の後、野木さんが困った顔で言った。

「……さくら女。違う。」

「え?」

「違う。……結婚するの、明田さんじゃない。」

「……は?」

意味がわからない。