小夜啼鳥が愛を詠う

光くんの言葉に何の含蓄もなかった……と思う。

思うけど……そもそも、私には知らされてないし。

どう反応すればいいのだろう。

こういうの、困る……。


せっかく楽しみにしてたみゆちゃんの初舞台なのに、私は隣の野木さんが気になって気になって……感動に浸れず、泣くこともできなかった。

そして、椿さんのソロ。

……ほんとだ。
以前のように声が伸びやかじゃない。

でも、だいぶ喉は落ち着いたらしく、かすれてもいない。

何となく、野太くなったような……。

うん。

男役として、イイ声変わりになったんじゃない?

ホッとすると、改めて隣の野木さんが気になった。

……泣いてる。

いや、これ、悲劇じゃないよ?
むしろ、コメディータッチのハッピーエンド。

なのに握った拳で涙を拭いてる野木さん。

……感傷的なのか……感情失禁なのか……。

あ。
そっか。

明田先生がフランス永住ってことは……野木さんもフランスに行っちゃうんだ。

来月?

じゃあ、もしかして、一緒に観劇できることも、もうそんなにないのかもしれない。

淋しいな……。

でも、ちゃんと祝福しなきゃ。

中学の時から……ううん、それ以前から、野木さんは明田先生に憧れてたんだもん。

10年以上想ってた相手と結ばれるなんて、すっごく素敵なことよね。

私が淋しがって拗ねてる場合じゃない!


幕が下りると、私はすぐに野木さんに言った。

「おめでとう!野木さんが幸せそうで、すごくうれしい!結婚式、楽しみ。コスプレじゃない、ちゃんとしたドレス着るんでしょ?……明田先生に挨拶できるのも、うれしい!」

勢いでそう続けたら、野木さんは目をこすってから、笑顔になった。

「ありがとう。ドレスも、白無垢も、色打掛も着る。お色直しいっぱい入れて、退屈なスピーチは聞かないつもり。」

「……今時珍しいね。派手婚ってやつ?すごいね。でも、野木さん、かわいいから何でも似合いそう。明田先生も楽しみでしょうね。」

そう言ったら、野木さんは苦笑した。

「やー。今さら。明田さんは野木が何着てても一緒。……春秋先生が選んだから間違いないと思う。」

「……うん。春秋先生なら、趣味よさそう。」

返事しながら、私の頭の中に疑問符が飛び交い始めた。