小夜啼鳥が愛を詠う

……2人とも……いつもより、若いというか……夫婦というより恋人みたい。
ほほえましいぐらい、ラブラブ。

オフィスラブ効果?

いつか、薫くんと私も……こんな風になれるのかな。



「はい。じゃあ、初仕事。コレ、整理しながら熟読して。」

あおいさんはそう言って、ダンボール箱を私の真新しい机に置いた。

ダンボールには、何冊ものファイルや書類の山、封筒に入った分厚い報告書や冊子がごちゃごちゃに入っていた。

……ただの整理だけじゃなくて、熟読付きなんだ。


とりあえず、真新しいパソコンを立ち上げて、データを取りながら仕分けした。

途中、ドアの開閉音で顔を上げた。

社長が部屋にいなくなっていた。

程なく社長が戻ってきた。

その手に、コーヒーカップを3セットのせたお盆を持って!

嘘!?

「社長!私が!」
慌てて立ち上がって、駆け寄った。

頼之さんは片手を前に突き出して、お盆を私から遠ざけた。

「いや。今はいい。さっちゃんも、あおいも、仕事してくれたらいいから。……今、一番暇なのは俺やから。」

びっくりした。

いや、でも、そーゆーのは、社長自らすることじゃないでしょ?
何のための秘書なの?

「そうそう。他の部署も、そうしてもらってるの。来客にお茶を出すのは女性社員だけど、自分のドリンクは自分でいれる。コピーも自分でする。一般職と総合職の垣根を取ったからね。女性社員だろうが、管理職だろうが、差別化してないの。ある意味、能力主義?」

あおいさんはさらっとそう言って、悠々と社長からコーヒーカップを受け取った。

「んー。イイ香り。ありがとう。頼之さん。どこの豆?」
「タンザニア。……マスターのコーヒーとは比べようもないけどな。」

そう言って、社長は私にもコーヒーカップをくれた。

キリマンジャロの心地いい香りが鼻孔をくすぐった。

「創立時からコーヒーの輸入もされてるんですよね。」

研修で教わった会社の歴史を思い出して、そう聞いてみた。

今現在の主戦力ではないけれど、明治時代に衣料や食品の貿易会社からスタートした伝統は絶たれていないようだ。

ちなみに現在は、電子製品の輸出からの利益が大きいらしい。