小夜啼鳥が愛を詠う

「……そうなんですか?……確かに、過分にかわいがってもらってますが。」

「せやろな。女友達少なかった吉川の数少ない親友が、まさにそんなタイプやったわ。世間知らずのお嬢サマで、努力家で……潔(いさぎよ)すぎ。自分ほど美人ちゃうけど。」

あ。
わかっちゃった。

佐々木コーチ、その子のこと、好きだった?

あれ?
でも、確か、光くんママに片想いだったんだよね?

ん~?

私はことさらに小声で聞いてみた。

「……好きだったんですか?私に似た……光くんママの親友さんのことも?」

すると、佐々木コーチの顔から表情が消えた。

……あら。
これ、けっこう……マジかしら?

「すみません。内緒の話なら口外しません。」
私は慌ててそう囁いた。

でも佐々木コーチは、ぶっきらぼうに言った。

「あほか。内緒でも何でもないわ。初恋は吉川やけど相手にされとらんかったわ。それでも一応卒業式の後でけじめつけようとコクって振られたら、いつも隣におった子にその場でコクられたんや。流れでつきあうつもりになっとったけど、結局あかなんだ。……それだけや。」

……それだけ?

でも、佐々木コーチ、たぶんそのヒトのことも好きになったんじゃないかな。

ダメになった理由はわかんないけど。

……いや……。

未来くん、だ。

佐々木コーチって、確か学生結婚……未来くんが産まれた時はまだ一回生だったと聞いた気がする。

そっか。

光くんママとそのヒトとの二股じゃなくて、そのヒトと未来くんママとの二股未満だったのか!

……結ばれなかったご縁だから、美化していつまでも消えないのかな。

「まあ、おさまるとこにおさまったし、ええんちゃう?……自分も、薫のこと、見はとっりや。……しょーもない性欲で浮気されたら、目ぇ当てられんで。」

照れ隠しなのか、佐々木コーチはただでさえ声が大きいのに、さらに声を張ってそんなことを言った。

他のヒトに聞こえるってば!!

あわあわしてると、ぐいっと背後から首を絞められた……と、錯覚するほど強く、薫くんの腕に抱き寄せられた。

ふわりと、薫くん特有のイイ香りと、汗と土の匂いがした。

「何の話してるんすか!……コーチ!桜子をからかわんとってください!泣かせるんやったら、もう手伝わせませんからっ!」