小夜啼鳥が愛を詠う

このまま、スルーして、フェードアウトする……つもりだった。

でも、私の中で、ぷちんと音を立てて、何かが弾けた。

口から、勝手に言葉が飛び出した。

「いえ。ずっと誤解されてましたが、違うんです。私がお付き合いしてるのは、小門薫くんのほうです。」

……まあ、誤解するように仕向けたんだけどね……主に光くんが。

教諭は唖然として、それから、首を傾げて、私をマジマジと見た。

「……いや、でも、教頭先生が……。」

当事者の言葉より上司の口添えのほうが重要……なのよね。

私は苦笑した。

「教頭先生は、私の在学中も誤解されてました。……無理もありませんが。当時、小門くんは小学生でしたから。」

「そんな頃から!?」

騙されていたと怒られるかと思ったら、むしろ教諭は笑った。

「……そうかぁ。なるほど。……うん。違和感あったんや。小門はどう見ても、古城くんに惚れとるし。まあ、そういうことなら、がんばり。……ああ、そうや。部活も全国行ってほしいけどな、大学受験もハッパかけたって。」

拍子抜けした。

「……はい。学歴にこだわる家じゃない割に、みんな高学歴なので、たぶん本人もそのつもりだと思います。時期が来れば、そちらもサポートします。」

そう応えると、教諭は肩をすくめた。

「望めば何でも叶うやろうに、好き好んで苦労を背負い込んで。一生、あいつのお守りする気なんやなあ。……まあ、結婚式には恩師として呼んでくれ。御車代付けてな。」

そう言って、身を翻した教諭の背中に向かって言った。

「お守りしてもらってるのは、私のほうです。」

教諭は、わはわはと笑いながら行ってしまった。

……言っちゃった。

薫くんが周知させる前に、自ら言っちゃったよ、私。

たぶん、他のヒトにも聞こえてたよね。

恐る恐る振り返ると、控えていた部員も、マネージャーの女子達も、しっかり注視していた。

まあ、この辺の子たちは……既に知ってるんだけど……やっぱり気恥ずかしいな。

「……なるほど。普段は控えめなイイ子やけど芯は強くて頑固?……吉川の好きなタイプやな。嫁にて望むわけや。」

ニマニマ笑って、佐々木コーチがからかった。