小夜啼鳥が愛を詠う

佐々木コーチは苦笑いして、立ち上がった。

グラウンドでボールを追う薫くん達を仁王立ちで見ながら、佐々木コーチは私に言った。

「1つ、頼んでいいか?」
「はい。何でも仰ってください。」

そのために、ココに居る。
私は手帳とペンを準備して佐々木コーチの言葉を待った。

佐々木コーチはそれを見て、また笑った。

「自分、出来すぎ。……頼もしいわ。昔、吉川に頼んでやってもろとったことやねんけどな、対戦校のデータを集めて対策を立ててほしい。」

「……え……。」

さすがにびっくりした。

スコアを取る、とか、成績を調べる、とかならわかる。

でも、作戦も?私が考えるの?

「私に……できるでしょうか……。」

途方に暮れてそう聞くと、佐々木コーチは言った。

「1人でやれとは言わん。薫の兄貴と、菊地のぼんにも頼んだらええ。」
「……佐々木コーチは?」

恐る恐るそう尋ねると、佐々木コーチは胸を張った。

「俺はあいつらを鍛える。考えるのは苦手や。自分に任すわ。適材適所やろ?分担。な。」

……な……って……。

丸投げされちゃった。

えーと……。

途方に暮れそうになったけど、すぐに気づいた。

光くんママは、経験者なのよね。
とりあえずは、そちらに教わったらいいんだわ。

「わかりました。できる限り、やってみます。」

そう返事すると、佐々木コーチはポンと私の肩をたたいた。

「そんながんばる必要はないで。しょせん俺らにできるんは、準備だけ。本番でがんばるんはあいつらやねんし。……気楽にな。」

「……はあ。」

言ってるそばから、佐々木コーチはグラウンドの部員に大声で檄を飛ばした。

……佐々木コーチ御自身、初日から充分過ぎるほど張り切ってらっしゃるようだけど。



下校時間のチャイムが鳴る頃、教育実習でお世話になった教諭が通りかかった。

私に気づいたらしく、会釈すると、驚いた顔でこちらに近づいて来た。

「どうした?実習は終わったのに。……サッカー部の手伝いか?」
「はい。その節はお世話になりました。この度、佐々木コーチのお手伝いをすることになりました。」

そうご挨拶すると、教諭は目を見張って、それからちょっと笑った。

「そうか。そりゃ大変やな。……まあ、いずれ嫂になるんやったら、駆り出されるか。」

……アニヨメ。