小夜啼鳥が愛を詠う

佐々木和也さんって……頭で考えるプレーしてたっけ?
考える前に身体が動いていた選手のような気がする。

……むしろ……お父さんの頼之さんの言葉じゃないかしら。

サッカーを、というより、部活を通して、ヒトとして……会社を背負う人間として、教育されてるんだろうな。

だとすれば、私の役割は……佐々木和也さんのサポート……か。


「わかりました。微力ながら、お手伝いします。」
私はわざわざちゃんと座り直して、そう宣言した。

「おう!頼むわ。入社するまででええし。」
薫くんも背筋をのばした。

そうして2人でほほえみあって……再び私たちは、抱き合い、仲良くなった。



翌週、3年生が引退した。
……が、昨年同様、秋に推薦で大学が決まったら部に復帰すると息巻いていたようだ。

まあ、そりゃそうだろう。

憧れの選手ががっつりコーチしてくれると聞いて、指をくわえて見てないよね。

その佐々木和也さんは、新体制がスタートするその日からやってきた。

「……えーと、古城さん?うちのチビらの憧れの桜子お姉さまやったな。こき使うな、って釘刺されたわ。」

佐々木コーチはカラカラと豪快に笑った。

「いえ。何なりとご用命ください。そのためのお手伝いですので。」

折り目正しくそう言うと、佐々木コーチは首を傾げた。

「自分……誰かに似てる気がする。」
「誰か?ですか?」

そう尋ねると、佐々木コーチはじっと私を見て、ちょっと苦笑した。

「美人やな。気のせいや。忘れて。……てか、何で、薫なん?……まあ、見た目は小門さん似のイケメンやけど……中身は、かなり吉川似やろ、あれ。年もけっこう離れとんねんろ?」

吉川は、光くんママの旧姓だ。

「何で、って……一言ではとても言えませんけど……気がついたら好きになってたんです。理由は、今となっては何を言っても後付けというか……。」

上手く言えないけれど一生懸命答えようとした……んだけど……気づいたら、佐々木コーチはニヤニヤと笑っていた。

……からかっただけ……だったのかな?

「……自分、真面目やな。」
佐々木コーチはそう言って、目を細めた。

その目に映っているのは私だけど、見ているのは私じゃない。
誰かを懐かしみ、愛しむ瞳。

「私にどこか似たそのヒトも真面目だったんですか?」
思わずそう聞いていた。