小夜啼鳥が愛を詠う

「今さらでしょ?薫くんよりできるヒトなんて未来くんとあと2人ほどしかいなかったわよ?イチイチ、他人の不出来やミスに目くじら立ててたら、とっくにサッカーみたいな団体競技やめてるって。」

「あと2人?誰や?」
薫くんは、ちょっと笑ってそう聞いた。

……もしかして、未来くん以外の先輩達には勝ってるって思ってるのかしら。

返答に窮していると、薫くんは私の手をそっと取って手首に口付けた。

くすぐったくて、背中が震え……身体の奥がせつなく疼いた。



「勝っても負けても……3年のやりたいようにやるって……昨日のミーティングでそんな流れになって……。なんで、俺がやる、って主張せんかってんろう。煙たがられても、もっと前に出ればよかった。」

私をいっぱい甘く啼かせて鬱憤を晴らしたらしく、薫くんはやっと心情を吐露した。

「うーん。体育会系の上下関係には抗えないよ。仕方ない。……でも、後悔してるなら、薫くんが最上級生になった時には、下の子の意見も聞いてあげてね。」

……会社を経営するようになった時も……ね……と心の中で付け足した。

「あーあ。せっかく、藤やんとこ、インターハイ出るのに。一緒に出たかったな~。」

吹っ切れたのかしら。

「応援に行ってあげたら?去年、藤巻くん、わざわざ来てくれたんだし。……あ。一緒に旅行、しようか?」

けっこう本気でそう誘ってみた。

でも、薫くんは首を横に振った。

「来週で3年が引退する。ちょっと早いけど、俺らの時代が来るから、遊んでられへん。選手権は絶対、国立行くから。」

本気だ……。

……切り替え早いなあ。

たくましいわ。

頼もしく感じると同時に、淋しさも感じた。

たぶん今まで以上に、薫くんはサッカー部にかかりっきりになるんだろうな。

「うん。がんばってね。応援してる。」

「おう。……てか、もう、遠慮せんでええで?桜子、陰から覗くだけやなくて、手伝いに来ぉへんけ?どうせ、暇やろ?」

薫くんは、しれっとそんなことを言った。

「……まあ、暇ね。薫くんに比べたら。」

何と言っても、パラダイス経済の四回生。
教育実習も終わったし、大学には週2日しか行かなくてもいい。

既に来年の就職も決まってる私も、就職せずにパパのお店を手伝う予定の光くんも、はっきり言って暇だ。