小夜啼鳥が愛を詠う

どうやらハットトリックを決めたことでスポーツ紙だけでなく大手新聞社の記者にもコメントを求められたらしい。

「明日は朝からコンビニに行って新聞を買い漁ってこなきゃ。」

かつて、おじいちゃんの成之さんが頼之さんの新聞記事を集めたように、私もスクラップしている。

去年の記事は、未来くんの名前がほとんどだったけど、今年は薫くんがいっぱい。

「おう。……あ、桜子。明日、桜子の教育実習が終わったら、もう我慢せんしな?」

薫くんはそう言って、私を抱く腕に力を込めた。

「……え……。いや、別に……フェードアウトでいいんじゃ……」

わざわざ波風立てなくても……。

でも薫くんは、かなり腹に据えかねるらしい。

「明日が解禁やろ。遠慮せんから。」
とだけ言って、問答無用で私の口を封じて、貪った。

……やっぱり王様だわ……薫くん。



翌日、私の教育実習が終わった。

二週間、気を揉んだわ……。

終礼のあと、懐き始めてくれていた生徒たちと写真を撮ったり、おしゃべりを楽しんだり……楽しいひとときを過ごした。

担当教諭と教頭にも挨拶して、全て終了。

お昼ご飯は食いっぱぐれたけど、気分が晴れ晴れしていた。

グラウンドでは、薫くんたちサッカー部も練習していた。

私は足を止めて、誰に気兼ねすることもなく薫くんに見とれた。

薫くんは練習に集中していて私に気づかないようだ。

明日勝てばインターハイだ。

がんばって!と心の中で何度も唱えた。

ぽつりと雫が一滴。

……雨?

また風邪ひいたら大変!

慌てて木陰に移動した。

薫くんたちは、こんな雨の中でもおかまいなしに練習を続けていた。

後ろ髪は引かれたけれど、本降りになりそうなので早足で帰宅した。


その夜、薫くんの髪からは雨の香りがした。

「藤やんとこ、優勝したって。」
薫くんはうれしそうに私にそう教えてくれた。

「すごい!今日?……わぁ~。よかったねえ。」
「ああ。藤やんもディフェンスで貢献したみたいや。……次は俺らやな。」

そう言って、薫くんは私の胸に顔をうずめた。

……甘えてる?
不安材料があるのかしら。

何だか心配になったけれど、私は気づかないふりをした。




翌日は雨の決勝戦となってしまった。