小夜啼鳥が愛を詠う

教諭にそう言われて、私は慌てて首を横に振った。

「こんな小さい頃から、私のほうがお世話してもらってました。弟なんて言ったら、……小門くん、めちゃめちゃ怒ります。」

私の言葉を聞いて何をどう感じたのか、教諭は笑った!

「……なるほど。古城くんは優しい性質しとるわ。授業を見て、偽善じゃなくほんまに親切な子ぉなんやろうと思ったわ。……教員には向いてないけどな。」

「……残念です。」

結局、最後まで教師に向いてないと言われ続けた。


ゲームは準々決勝ほどの熱戦ではなかった。

相手を軽く見たのだろう。

薫くんは、初っぱなから無謀な程にシュートを放った。

どうしてもハットトリックを決めたいのだろう。

前半だけで2点をあげ、意気揚々とベンチに戻ってきた。
……私に腕を上げて、アピールすることを忘れずに。

「……確かに、かわいい弟キャラではないな。」
隣の教諭が顔をしかめた。

「ええ。昔はナイトで、今は王様です。」

そう答えたけど、教諭は首を傾げるだけで何も言わなかった。


お手洗いに席を立ち、ついでにポカリを買い足した。

日陰で風に当たっていると、光くんがひらひらと手を振って近づいてきて言った。

「さしずめ僕は、昔は王子様で、今はナイトかな。」

「……聞いてたの?」

「そりゃ聞こえるよ。密集して座ってるからね。……薫、張り切ってるねえ。今年のインターハイは北関東。来年は四国。……いや、来年は無理かな。」
光くんは飄々とそう言った。

確かに、今のメンバーを見てると、来年は厳しいかもしれない。

でも、来年のキャプテンは間違いなく薫くんだろう。
勝てると信じたい。

「無理でも応援したげて。」

そう言ったら、光くんは肩をすくめた。

「僕ら家族はけっこうシビアな見方してるよ。……無条件に応援するのは、おばあちゃんだけ。だから、さっちゃんは、ダメ元で力になってやって。」

言われるまでもない。

私はうなずいた。

「もとより、そのつもり。インターハイもだけど、冬の選手権も。東京行くわよ。」

言葉にしたら、本当にその気になってきた。

ママが椿さんのサポートに燃えてるように、私も薫くんの心を支えたい。

ずっと……。



その夜、薫くんは超ご機嫌さんだった。