小夜啼鳥が愛を詠う

「はいはい。カッコイイカッコイイ。」

光くんは呆れたように繰り返したけど、私は気にならないぐらいドキドキしていた。

何がどう作用したのか、薫くんはやたら発奮し、追加点をあげた。




「あと5分あればハットトリックもできたのに。」

夜に我が家を訪れた薫くんは、めくるめく快楽を貪ったあと、ピロートークで口惜しそうにそう言った。

……てか、あれだけ走り回って……どうして、こんなに元気なんだろう。

もはや腰が立たない私は、ぐったりとうつ伏せに脱力したまま、かすかにうなずいて同意してみせた。

「桜子は?光と何しとったん?怪しい動きしとったけど。」

「あー……うん。光くんが教頭先生にご挨拶したの。……教頭先生、私たちの担任だった頃から、光くんと私がつきあってると思い込んでるから……」

最後まで言えなかった。

薫くんは、目に見えて不機嫌になってしまった。

……やばい。

このままじゃ、まずい。
ちゃんと説明しなきゃ。

気持ちは焦るんだけど、薫くんが怒ってると思うと……言葉が出なくなってしまった。

どうしよう……。

かわりに、涙がこみ上げてきた。

薫くんはため息をついて、それから私の涙を拭いてくれた。

「……泣かんでええから。だいたいわかった。とりあえず、桜子の教育実習が無事に終わるまでは、我慢する。」

いつの間にか、薫くんは、清濁併せ呑めるオトナになったんだなあ……って言うと、大袈裟過ぎるかしら。

感動して、また泣けてしょうがなかった。



言葉通り、薫くんは我慢してくれた。

そのせいもあってか、翌週になると休み時間に私に話し掛けてくれる生徒が増えた。

……まあ、薫くんの情報収集が目的っぽい子も多かったけど。

嘘はつきたくないので、薫くんの話は避けた。

さ来月、新人公演で初主演する椿さんの話を聞かれることもあった。

こちらも迂闊なことは言えないんだけど……当たり障りなく、椿さんがいかに努力していたかを語った。


ちなみに、本公演が始まったら、椿さんは「会」と呼ばれる私設ファンクラブを立てることが決まっている。

代表は、以前からの話の通り、ママが引き受けた。