小夜啼鳥が愛を詠う

あまり似てないと思うんだけど、教頭に似てると言ってもらって、光くんはうれしそうだった。

「弟も彼女には懐いてますから、手に負えない時は彼女を盾にすると言うこと聞きますよ。」

「ほう?それはいいことを聞いた。担任に教えてやろう。」

教頭はニコニコうなずいて、私に言った。

「まあ、しっかりやりなさい。古城は真面目だから問題もないだろうが、困ったことがあれば相談に来なさい。……いや、何もなくても、一度ぐらい、空き時間に教頭室を訪ねておいで。コーヒーぐらいしかないが。」

「先生。コーヒーなら、是非、純喫茶マチネへ。たいてい、僕、いますので、また覗いて下さい。」

高校生の頃とは別人のように愛想のいい光くんに、教頭はすっかり相好を崩していた。



「さて。これで、多少は風向きが変わるだろ。」
後半戦が始まり、再び団体席から離れてから、光くんはつぶやいた。

「うん。ありがとう。周囲の女の子たち、首傾げて困惑してた。……結局、また光くんに迷惑かけちゃったけど。ごめんね……。自分で何とかしなきゃいけないのに。」

自分が情けない。

しょんぼりそう言うと、光くんがおどけて言った。

「こんなの迷惑でもなんでもないって。それにね……挨拶するだけで泣くほど感動してもらえて、僕も気恥ずかしい。それこそ、どれだけ学校に迷惑かけてきたんだろう、って。」

「……ええ、そりゃあもう、どの担任の先生も大変だったと思うわよ。」

ここぞとばかりに私はそう言って……2人で笑い合った。

不意に応援席から歓声が上がった。

慌てて顔を上げると、薫くんがドリブルで相手ゴールに接近していた。

大変大変。
見てないと、怒られちゃう。

「猪突猛進だね。技術より気迫で押し切っちゃいそう。……おいおい、ホントに1人で行く気かな?」

光くんが心配する通り、薫くんはまるでチームに味方がいないかのようにがむしゃらに進んだ。

さすがに、そのままシュートすることはなかったけれど、クレバーなパスワークからの美しいゴールを決めた。

飛び上がる部員達と、応援席。

薫くんはわざわざこっちに走ってきて、私達に腕を上げてアピールした。

「……余計なことを。」
光くんが苦笑した。

「……でも、カッコイイ……。」

思わず、口からそんな言葉を漏らしてしまった。