小夜啼鳥が愛を詠う

……いや、だから……目立ちたくないのに……。

困ってる私をニコニコ見つめながら、光くんは日傘をさした。

相合い傘というよりは、私に日が当たらないように傾けて。

……普通にさしてるより……ラブラブっぽいかも。

視線が気になったけど、ゲームが始まるとそれどころじゃなくなった。

相手は、強豪校。
実力は伯仲していたけれど、やはりあちらのほうが場慣れしてる気がした。

「……やだね。色眼鏡だよ、それ。いくら常連校でも生徒は3年ごとにチェンジしてるじゃないか。去年の戦績は薫たちのほうがよかったんだから。ネームバリューに飲まれすぎ。」

ハーフタイムに光くんは、わざわざ薫くんにそう告げて、それから私を連れて現在の教頭のところへと向かった。

「先生ー。ご無沙汰してます。小門です。……今、彼女が教育実習でお世話になってるそうで、ありがとうございます。」

如才ない挨拶に、教頭は呆気にとられた。

……まあ、教頭が私たちの担任だった頃って……光くん、まだまだ病的な人見知りだったしなあ。
まともに会話しないどころか、朝礼も終礼もいないことのほうが多かったっけ。

思えば、ずいぶんとフレンドリーになったものだ。

「……小門か……いや、お前のほうから声をかけてくれる日が来るとは……。」

教頭は、かつてはよほど悩んだのだろう……目を潤ませて、何度もうなずいていた。

さすがに、光くんは申しわけなさそうに頭を下げた。
「その節は、大変失礼いたしました。彼女のお父さんのお店を手伝っているうちに、対人恐怖症が改善されました。」

……対人恐怖症って……初耳~。

「そうか。よかったな。……そうか。今も、仲良くやっとるんやな。よかった。……本当によかった。」

教頭は眼鏡をはずして、ハンカチで目尻をおさえた。

……光くんてば……泣かせちゃったよ……あーあー。

周囲の学校関係者も生徒も、ちらちらとこっちを見てる。

光くんは、意識して声高に言った。
「あのフォワードの2年生、弟なんですよ。」

「……そうらしいな。タイプは違うが、よく似とぉるわ。優秀なイケメンやのに、つんつん尖っとぉる。母親似、らしいな。」

教頭は、少し離れたところで賑やかにワイワイはしゃいでいる光くんママに視線を移した。

「……似てますか。」