小夜啼鳥が愛を詠う

最初は意味がわかってなかったけど、生徒の視線を追って気づいた。

女子生徒のお目当ては、薫くんだ。

同じクラスになりたくて、わざわざ政経を選択したってことみたい。

……うわぁ。

そりゃあね。
薫くんがもてないはずがない。

カッコイイし、背も伸びた。

サッカー部では一年生の時からスタメンで活躍してるし、成績も上位。
必要以上に女子にクールなところも、たぶん逆に憧れられる要因じゃないかな。

うーん……。

つくづく、みゆちゃんがいてくれたら……と、思わずにはいられなかった。

ヒト任せじゃいけないんだけどね。


「桜子。サッカー部来るやろ?」
初日の終礼のあと、教室の後ろに立っていた私に、薫くんが近づいてきて、そう聞いた。

「……古城先生、って呼んでくれるかな?」
貼り付けた笑顔がひきつるのを自覚しながら、そうお願いした。

ほらほらほら。
女子が注視してるよ。
怖いってば。

わかってるのかわかってないのか、薫くんは肩をすくめた。

「じゃあ、古城先生。部活も参加奨励されとるんやろ?サッカー部、来ぉへん?」

「……これから、控え室で日誌書かなきゃいけないみたい。終わったら、各部を見て回るつもりだけど。」
なるべく自然体でそう答えた。

「わかった。ほな、最後にサッカー部な。一緒に帰ろう。」

教室内の空気が変わった。

あからさまな敵意と興味の目が私に突き刺さる。

……これは……やばいんじゃない?

案の定というか、何というか……翌日の朝、担当の指導教諭に怒られた。
「実習初日に特定の男子生徒と必要以上に親しくなられては、他の生徒に示しがつかんわ。」

「……すみません。……あの……小門くんとは、もともと知り合いで……」

さすがに彼氏とは言えないけど、親同士が仲良くて……と説明しようとしたら、
「言い訳は見苦しい。謝罪に理由説明は必要ない!……知り合いなら、なおさら、悪い。依怙贔屓は一番あかんわ。」
と、さらに強く叱責されてしまった。

とほほ。

仕方なく、薫くんに近づかないように距離を置いて行動してみた。

薫くんにも事情を話して協力してもらったけど……お互いに、視線は正直というか……まあ、バレバレだった。