小夜啼鳥が愛を詠う

「さっちゃん、ごめん。あーちゃんにバレた。」
薫くんの夏休みが終わる頃、光くんが私に手を合わせて謝った。

「……なに?急に……なにが?」

なにかまずいこと?

パパに聞こえないように、小声で聞くと、光くんも小声で答えてくれた。

「さっちゃんが、須磨から帰ってきて、寝込んだこと。……薫が大目玉喰らって、もう大変。今晩、お見舞いとお詫びに行くって。」

「……だって、もう治ったのに。……それに、別に薫くんのせいじゃないし……。」

大変だ。
たいしたことじゃないのに、そんなの……恥ずかしすぎる!

「いや。結果的に無理させたのは薫なのは間違いないし。……ごめんね。こんな話、ぶり返して。」

「ううん。……じゃあ、早めに帰ってママにも伝える。ありがとう、光くん。心の準備ができた。」

私は、大好きなコーヒーを一気に飲み干して、席を立った。

帰宅してママに話すと、大笑いされた。

「まあまあ。ありがたいわね。さっちゃん。嫁ぐ前から大事にしていただいて。……来るのはあおいちゃんだけかしら?何か持って帰ってもらえるもの、作ろうかな。さっちゃん、手伝ってくれる?」

ママは上機嫌でお料理を始めた。

……笑い事じゃないのにぃ。



夕方から、2人で大量の五目いなりを作った。

普通に胡麻だけ混ぜたいなり寿司でもすごくおいしいのに、ましてや牛蒡、人参、蓮根、椎茸、鶏肉入りなんて、お揚げさんに詰めるまでもなく美味しいし。

「持って帰っていただくお重箱は、うーん……あ、これにしようか。」

ママが選んだのは、黒々艶々の輪島塗の三段重。

ゴージャス!

「うん。見映えが違うわね。残りは春慶。うちの夕食。」

鼻歌まじりに、ママはお気に入りの柔らかい春慶塗のお重箱に詰めた。
なるほど……仰々しさが全然違うわ。


18時頃、光くんママがフルーツを持ってお見えになった。

恐縮し謝罪してくださったけれど、ママと2人がかりで一生懸命、何でもなかった!大丈夫!と言い張った。

そのまま、話は今後のことに移行した。

「シングルマザー未遂の私と、シングルマザー経験者のあおいちゃんだから、言えることだけど……」
と、前置きした上で、ママは私に提案した。