小夜啼鳥が愛を詠う

ひたいにおでこをくっつけて、私をじっと見る薫くん。
「あ……熱、下がってるかも。……よかった。」

「薬が効いたんだね。……気分はどう?つらくない?」
ゆっくりと光くんも近づいてきた。

優しい瞳に、いつもより暗い翳りを感じた。

……やっぱり……傷つけてしまったかもしれない……。

「ありがとう。大丈夫みたい。……さっきは、ごめんなさい。恥ずかしくて……けっこうひどいこと言った……。」

そう謝ったけど、2人ともすっかり恐縮してしまってる。
だいぶ反省したみたい。

「いや。俺らが悪い。ごめん。……デリカシーなかった。」
薫くんはしょんぼりして、そう言った。

頭を撫でたくなるぐらい、かわいかった。

そして、光くん……。
また、私からさらに距離を置こうと決意したんだろうな……。

淋しいけれど、自然の成り行きなのかもしれない。

「光くん。心配してくれてありがとう。2人の優しい気持ちは、ちゃんとわかったから。」
薫くんと手をつなぎながら、光くんにそう言った。

「……ごめん。」
光くんは泣きそうな顔をしていた。

……二人三脚だった私たちの関係は、この日を境に変わった。



夜中の2時に、光くんの運転で浜辺へおりた。
さすがに、真っ暗で誰もいない。

「はい。さっちゃん。火を付けるよ。」

また熱がぶり返したら大変だから……と、私は毛布にくるまれて、ほとんど薫くんに横抱きにされていた。
毛布の隙間から出した手に持たせてもらった花火に、光くんが火を付けた。

火薬の匂いと、パチパチと弾ける音……そして、星が光って散っていく……。

「綺麗……。」

なぜか、泣けてきた。
涙で花火の光がにじむ。

私を抱く薫くんの腕に、力がこもった。

何も言わなくても、守ろうとしてくれてるのがよくわかった。

それだけで、幸せ……。



いつの間にか、光くんの姿が消えていた。

「薫くん。光くんが、いない。どうしよう。海に入っちゃったのかな。」
慌てて目をこすって、首を伸ばす。

「……大丈夫。光なら、波打際まで行って、靴と靴下を脱いでから海に足つけて、タオル取りに車に戻りよったわ。もう、前みたいな事はないわ。」

「そう。……よかった……はずだけど、ちょっと淋しいね。成仏されたのかな。」