小夜啼鳥が愛を詠う

「ドア。開けて。」
薫くんに言われて開けたのは、マスタールーム。

ここを使わせてもらうのは、はじめてだ。

扉の向こうは、まばゆい木漏れ日がシャワーのように降り注いでいた。
遠くの海も、キラキラしてる。
なんて、綺麗……。

「……新婚さん?」
薫くんの言葉に、振り返る。

わ!
綺麗!

大きなベッドには、濃淡の幾種類かのピンクと濃い赤の、たぶん薔薇の花びらが播かれていた。

「かわいいー。もしかして、これ、おばあちゃん?」
「間違いないな。こんなロマンティックなこと、お母さんがするわけない。」

そう言いながら、薫くんはそっと私をベッドにおろしてくれた。

花びらから甘いイイ香りがする。
うっとり。

……あれ?

「枕の下、なんか変。かたい?」

頭を上げると、薫くんがそっと起こしてくれた。

ばつが悪そうな顔してる……。

「……もしかして、おばあちゃん?……直接渡さなかっただけで、ここに準備してたのかしら。これで72個?」

完全に開き直って、私はそう聞きながら枕を剥ぎ取った。

……なるほど、枕の下にコンドーム……あれ?
違う?

そこに置いてあったのは、濃紺色の天鵞絨張りの小さな箱。

コレって……指輪?

「……あ~あ……。バレてもた。」

薫くんは残念そうにそう言って、手を伸ばす。

「後で渡そうと思っとったんやけど……まあ、ええわ。ごめんな。サプライズ失敗やけど、桜子へのプレゼントや。」

苦笑して、私に箱ごと指輪を手渡してくれた。

恐る恐る箱を開けた。

「うわっ!かわいい!」

思わずそう言ってしまうぐらいかわいらしい指輪だった。

たぶんプラチナの白い台に、無色透明のギラギラと存在を主張する小指の爪ぐらいのダイヤモンド。
そしてダイヤの両脇に、小ぶりの薄い薄いさくら色の石。

キラキラしてるけど、これは?
ピンクダイヤじゃなさそう……。
でもルビーやろトルマリンでもない?

「このかわいいピンクは、なんて石?」
「モルガナイトや。俺はこっちをメインにした指輪がいいってゆーとったんやけど、結局メインはダイヤになってしもたわ。」

……モルガナイト?

聞き覚えある気もするけど、知らない石だわ。