小夜啼鳥が愛を詠う

「ありがとうございます。いただきます。」

ガチガチの薫くんに、ママが耳打ちした。
薫くんは赤くなり、慌てて頭を下げて、飛び出した。

「待って!薫くん!……じゃあ、行ってきます。」


エレベーターの中で、薫くんがママの渡した紙袋から小さめの紙袋をつまみ上げた。

「なぁに?おやつ?」

そう聞いたら、薫くんは苦笑した。

「……たぶん、ゴム。これで5箱め。」
「え……。あ……。あぁ……。」

反応できない。

ゴムって……輪ゴムとかじゃなくて……避妊具のコンドームってやつよね?
……明るい家族計画……。

「すげー心配されとるんやな。昨日おじいちゃんがくれて、朝お母さんがお父さんと一緒に渡してきて、出がけに光が2箱寄越したわ。で、桜子のお母さん。一箱12個で合計60個。……やっぱり、俺、猿扱いされとー気がする。」
薫くんはそう言って、肩で笑った。

「……お願いだから、使い切ろうとか思わないでね。」
思わずそう懇願した。

それにしても……
「おばあちゃんとパパ以外みんなって……」

そうぼやくと、薫くんは首を横に振った。

「いや。光の2箱のうち1箱は、マスターからや。桜子に見られたくなくて、光に託したんや。」
「……パパったら……。」

恥ずかしいよぉ。


電車はけっこうこんでたけど、神戸を過ぎて西へ進むたびに空席が増えた。

対照的に、須磨はにぎわっていた。

キラキラした海も、浮かれた音楽や歓声の賑やかなビーチも気になったけど……今日はそれどころじゃないよね。

2人きりの時間は、短い。

私たちは、隠しようもない緊張でギクシャクしながら、まっすぐ坂道を上がった。

別荘に入ると、薫くんは鍵をかけた。

ドキドキする。

薫くんは荷物を置くなり、私を腕にからめて抱き寄せた。

「あの……汗かいたから……シャワー……」

私の言葉はキスで遮られた。

優しさよりも激しさをぶつけられて……全身が悦楽にうち震えた。

……ダメだ……。
力が入らない……。

頭も……閉じたまぶたの裏側も真っ白になって……。

やっと唇をはなしてもらえた時には、何がどうなったのか、いつの間にか私はまともに服を身に付けてなかった。

「シャワー……」
慌てて、胸元を隠してそう訴えたけど
「あとあと。ベッド行こう。」
と、薫くんは私を軽々と抱き上げて、軽やかに階段を駈け登った。