小夜啼鳥が愛を詠う

「わかりました。今まで不快な想いをさせて、申し訳ありませんでした。以後、気をつけます。」
そう言って、薫くんは深々とお辞儀した。

「いや。極端すぎるだろ、それ。……普通でいいよ。普通で。」

パパがそう言うと、ママもうなずいた。

「普通の敬語……ですか?」

薫くんに聞き直されて、パパは肩をすくめた。

「上司ってわけじゃないしね。……家族になりたいんだろう?俺は、君のじいさんの同級生で……舅になるわけだろ?」

舅……。
イロイロ葛藤はあるだろうけど、既にパパもその気になってくれていることが、私にはうれしかった。

「……基準が曖昧で加減が難しい気がするけど、気をつけます。」
薫くんは苦笑していた。

パパはうなずいた。
「頼むよ。いつまでも柄の悪いクソガキにさっちゃんを任せられないからさ。……京都にも顔向けできないようなのは、困る。」

……え……。
京都って……。

パパの漏らした本音に、私は思わずママを見た。

ママの眉がぴくりと反応していた。

「京都……。」

薫くんも察知したらしい。
口をつぐんで、うなずいた。

「あの……私の人生に、そちらは口出しする権利……ないと思うんだけど……気にしないといけないことなの?」
何となく反発を覚えて、そんな風に言ってしまった。

するとパパは苦笑して、私の肩をポンポンと軽く叩いた。
「権利も義務もないよ。あるのは優しい愛情だけ。ただ、さっちゃんの幸せを願うことしかできないって、わきまえてらっしゃるから。離れていても、逢うことがなくても、見守ってくださってると思ってて。」

「……神様みたいやな。」

薫くんのつぶやきが、私の中にストンと落ちた。

なるほど。

家族じゃない、実態が見えない、なのに意識してなきゃいけないなんて……って、身勝手というか傲慢な存在だと思っていた。
でも神様と思えば、気は楽かもしれない。

「わかりました。」

おとなしくそう返事すると、パパはうなずいた。




「……びっくりしたわ。桜子が親に反抗的なん、はじめて見た。」
後から、薫くんがそう言っていた。

「反抗してるつもりはないけど……」