小夜啼鳥が愛を詠う

とりあえず、翌日、玲子さんとママに相談してみた。

「……めちゃくちゃやなあ。高校生になっても、クソガキのまんまね。」

玲子さんは呆れたけど、ママは笑っていた。

「めちゃくちゃねえ。ホント。でも、かわいいわ、薫くん。」

「……かわいいって……本気だって念押ししてたよ?」
危機感のないママにそう訴えた。

でもママは、肩をすくめた。

「そうやって自分を奮い立たせたんでしょ?……さっき1年生の子がこぼしてたけど、今日の対戦相手、ノーマークだったけどすごく強いらしいの。夕べ、彼らのゲームを撮影した動画を見て、勝てる気がしないってムードになったんですって。」
「……そうだったんだ。それで、薫くん……弱気だったんだ。」
「あら。やっぱり、薫くんも呑まれてたの?さっちゃんをダシに虚勢張って。かわいい。……でも、その条件、達成できないと思うなぁ。」

ママの予言は的中してしまった。

試合開始直後に、薫くんたちは点を入れられた。

……薫くんの抜けたディフェンス陣は、やっぱり防御力が落ちてるのかもしれない。

前半は1対0で終わった。

後半は、また少しディフェンスの面子を入れ替えたけれど、力及ばず。
追加点を許してしまった。

さすがに応援席はお通夜ムード。
このまま終わってしまうのか……と、誰もが諦めてしまっていた。

そんな中、未来くんからのスローインのボールが薫くんに渡った。

薫くんは、まだけっこう距離があったのに、迷わず思いっきり蹴った。

ボールは低空飛行でキーパーの手をすり抜けた。

ラッキーシュートだった。

でも、薫くんは100%本気で狙ってのゴールだと言っていた。

……狙ってできるもんじゃない、と頼之さんは目を潤ませていた。

一矢報いた薫くんは、調子に乗った……のかもしれない。

後半戦の終了間際に再びチャンスが巡ってきた。

薫くんが相手ディフェンスの執拗なマークから抜け出していたところに、未来くんからのパスが来た。

本来なら、薫くんはそこで、未来くんに一度ボールを返すなり、他の先輩にボールを回すなりすべきだった。
でも、チームのみんな、熱くなりすぎていたのだろう。

「薫行けっ!」
と、マークで身動き取れなかった先輩が叫んだことも一因らしい。

薫くんは、何も考えず、無我夢中でシュートを放った。