小夜啼鳥が愛を詠う

ただでさえ脱水症状なのに、口の中の唾液を全部舐め取られてしまったかもしれない。
身体から力が抜けて、私は薫くんの腕の中でくたりとした。

「……え……桜子……?まだ、しんどい?」
驚いたらしく、薫くんがそう聞いた。

「……干からびる……。」

そう訴えたら、薫くんはマジマジと私を見て、くっと笑った。

「笑い事じゃないのにぃ。」

口をとがらせると、薫くんは啄むようなキスを繰り返して……そのまま深く口づけて……今度は唾液を私に飲ませた。

……うわぁ。
薫くんの体液が私の中に入ってくる……なんか、ものすごく……やらしいことをしてるような気がする。

「……やばいな。このままココで……押し倒したくなってきた。」
やっと唇を放して、薫くんがため息まじりにそうぼやいた。

「……うん。」

私も……このまま……薫くんのモノになってしまいたい……。

でも、薫くんは突然パッと私を手放して、くるりと背中を向けた。
そして小さく呟いているのは、たぶん円周率。

……我慢しなくてもいいのに……。

何となく気まずい雰囲気がいたたまれなかったらしく、薫くんは藤巻くんがいる浴室に押し入った。

扉2つ向こうで、ギャーギャーと騒がしい声をあげてはしゃぐ高校生男子2人。
ほとんど逢うことはなくなったのに、顔を合わすと子供の頃のまんま、仲良しなのねえ。

……いいなぁ。
うらやましくって、ほほえましい。

緩んだ襟元をきつめに合わせて、玲子さんと藤巻のおじさまの居るお部屋へと戻った。


薫くんは、お風呂から上がると、早々に帰ってしまった。

まあ、こうして逢えただけでもラッキーなのよね。
明日も逢えるかな。



翌日は、薫くん達のゲーム開始時間ギリギリに会場へ行った。

「復活したみたいね。はい、これ。お守り。……玲子さん、ありがとう。」
ママは私に大きなポカリを押し付けて、玲子さんとおしゃべりを始めた。

「お姉さまー!」
ぶんぶんと手を振って、みゆちゃんが駆け寄ってきた。

昨日は佐々木和也夫妻しか見えなかったんだけど、みゆちゃんも駆けつけたのかな。

「光お兄さまに聞いたの!昨日は大変だったって。……元気になりました?」

みゆちゃんは心配そうにそう聞いてくれた。