小夜啼鳥が愛を詠う

浴衣を着て、髪を乾かしてると……え?
この声……え?え?え?

「薫くんっ!?」
びっくりして飛び出した。

薫くんが藤巻くんと、楽しそうに盛り上がっていた。

「桜子。……髪、まだ濡れとるやん。風邪ひくで。」
私に気づくと、薫くんはそう言って、私からドライヤーを奪った。

「何でココにいるの?」
「何で、って……さっきゆーたやん。あとで、って。……俺らの泊まってる旅館、すぐそばやねん。昨日も一昨日も風呂借りに来とったで。旅館の風呂、塩素入れすぎてて痒ぅなるねん。」

薫くんは顔をしかめてそう言うと、私の髪にドライヤーをあててくれた。

髪、乾かしてくれるの?
ドキドキしてきた。

昔は、小門家の須磨の別荘に泊まる時は、光くんが私の髪を乾かしてくれていた。
でも、最近はずっと自分で乾かしていたから……何だか、久しぶり。

「いつもと違う匂いがする。」

薫くんにそう言われて、私は首を傾げた。

「ココのシャンプーやコンディショナーの香り?」

「……いや。硫黄くさい。」
そう言って、薫くんはニヤリと笑った。

くさいと言われて、私は慌てたけど
「意地悪ぅ。当たり前やろ。しょーもないイケズゆーてんと、お前も硫黄くさくなってきぃな。汗くさいで!」
と、藤巻くんが薫くんに反撃してくれた。

薫くんは、ちょっとたじろいで、くんくんと自分の匂いをかいだ。

「……汗くさい?」

私にそう確認する薫くん……ダメ!かわいすぎるっ!
好きー!!!

するりと薫くんの腕に手を絡め、肩に頭をトンとつけてから、離れた。

「汗の匂いはするけど……わかんない。薫くんの香り。」

……慣れ親しんだ大好きな香りにしか思えない。
愛しくて愛しくて、しょうがない。
ずっとこの香りに包まれていたいの。

「……はは。ごちそうさま。あほらし。俺、先に入ろーっと。」
藤巻くんはそう言って、本当にお風呂場へ行ってしまった。

2人きりになるや否や、薫くんは私を抱き寄せてキスした。

やっと……逢えた。

1週間逢えなかったのなんて、たぶん、薫くん達一家が神戸に戻って来てから初めてだと思う。

……たった1週間なんだけど……長かったわ。

薫くんも、完全に電池切れてたんだろうな。

いつもと違う、まるでむさぼるようなキス……。

頭が、真っ白になっていく……。