小夜啼鳥が愛を詠う

「……お父さんはキャプテンでミッドフィルダー、薫はぺーぺーの一年生のディフェンダーですから、立場が違いますよ。今年は、大目に見てやってください。」
光くんがママにそう取りなした。


ママたちを見送り、バス泊組と別れると、私は玲子さんたち藤巻一家の逗留先に連れて行ってもらった。

……あれ?旅館じゃない?
立派な数寄屋造りの御屋敷なんだけど……なるほど、お寺の宿泊施設なんだ。

「御院さん!ごぶさたしてます。」

久しぶりにお会いした御院さんは、ますます穏やかで優しそうなお顔になられた気がする。

「ほんまに。その節は、お世話になりましたなあ。……今は、一介の勤め人やし、おっちゃんでいいで?」

御院さんの言葉の意味がわからずキョトンとしてると、藤巻くんが教えてくれた。

「御院さんとか、院家(いんげ)さんとかの呼称は、寺院を預かる僧侶を指すんですわ。今の父は本山の事務総長やから、おっちゃんでいいと思います。」

……と言われても……私の語彙に「おっちゃん」はなかったなあ。

「……じゃあ、おじさま。」

そうお呼びしたら、藤巻のおじさまは少し赤くなった。


夕食は、こちらのお屋敷を管理されているというおばあさんがケータリングと手料理でもてなしてくださった。

「お魚すっごくおいしいんですけど……このお醤油は?甘い???」

お刺身のお醤油が、びっくりするほど甘い!

「九州のお醤油は甘いのよ。それも、南にいくほど甘いんですよね?」
玲子さんが管理人のおばあさんにそう尋ねる。

おばあさんは、優しい声で答えてくださったのだけど、方言がすごくて意味がわからなかった。

……つくづく、九州とは文化が違うんだなあ。
沖縄とか、さらに異文化だし……日本は狭いようで広いわ。


食後、お風呂に入らせてもらった。

広い桧風呂というだけで感動なのに、お湯は硫黄の香りの温泉だった。

天国かも。
幸せ~。
夕べからの疲れやダメージが修復されていく~。

「さっちゃーん。湯あたりしないように、早めに出てらっしゃい。」
玲子さんにそう声をかけられ、慌てて出た。

脱いだ服がなくなり、糊のきいた浴衣が準備されていた。

もしかして、お洗濯してくれるのかな。

至れり尽くせり過ぎて、ありがたいやら申し訳ないやら。