小夜啼鳥が愛を詠う

「……なんでいるの?」
「え?だって。玲子さんも来るって言うから。逢いに来ちゃった。九州新幹線って快適ね~。」

……なんだ、それ。

「京都で会えばいいじゃないの!何か、ずるい!1人で楽して。」

文句を言うと、ママは首を傾げた。

「さっちゃんにも前に勧めたわよ?……それに、楽するためじゃなくて、時間短縮のためよ。新幹線ならパパがお店を閉めるまでに帰宅できるもん。」

「なっちゃ~ん!さっちゃ~ん!」
遠くのほうから、玲子さんの声。

「来た来た。ほら、さっちゃんはあっちでしょ。団体席。」
「ママひどっ!私も玲子さんに逢いたいもん。挨拶してく。……あ、藤巻くんも来た。」

2人は仲の良い本当の親子のように楽しそうにやって来た。
玲子さん、幸せそう……。

「さっちゃん、どうしたの?すっごく体調悪そうよ?」
「……あ~。夜行バスって初めてで、ちゃんと眠れなくって……。玲子さんは、お肌つやつや。何か、若返った気がする。」

そう言ったら、玲子さんは自分の頬を触って、藤巻くんに聞いた。

「そう?……そうかな?」

藤巻くんは笑顔でうなずいた。

……ほんとにうまくいってるんだなあ。

ほほえましく見てると、藤巻くんが私を見て首を傾げた。

「……ほんとに具合悪そうやけど、大丈夫ですか?色白通り越して、青白いですよ?」
「そんなに?……うーん。確かに睡眠不足で、ちょっと気持ち悪いけど、それ以上に何か緊張してきたみたいで、指先が冷たいかも?」
「貧血ね。さっちゃん、日陰にいなさい。熱中症になっちゃう。……スポーツドリンク買ってくる。」

ママの中の保健医スイッチが入ってしまったようだ。

「え。でも団体行動なのに……。」

そう言いつつも、ママを見つけて勝手に抜け出てきたんだけど。

団体席のほうを見ると、こっちを気にしてくれてるらしい光くんと目があった。

「やっぱり戻る。ママに、持ってきてって伝えて。玲子さん、藤巻くん、あとでね。」

そう言って、私は炎天下にきっちり並んで座っている団体にまじった。

……もちろん帽子はかぶってるし、長袖の薄い麻のカーディガンで直射日光を遮ってるけど……周囲の熱気がすごすぎて、すぐにくらくらしてきた。