小夜啼鳥が愛を詠う

「……うん。」

なるほど、そういうことか。

今日は、ってことは、今までもそうやって我慢してきてくれてたんだ。

……円周率、ね。
おおかた、光くんが吹き込んだんだろうな。

申し訳ないけど、笑いがこみ上げてくる。
でも不用意に笑っちゃうと、傷つけちゃう?

なるべくバレないように、私はうつむいて笑いに耐えた。

「……泣かんといて。また明日くるから。」

肩が震えてるせいか、薫くんは私が泣いてると勘違いしたみたい。

私は慌てて顔を上げた。

「ごめんごめん。泣いてない。幸せ過ぎて泣けるけど、今は泣いてない。……でも、明日ももちろん会いたい。待ってる。」

そう言ったら、薫くんはホッとしたみたい。

優しい顔が近づいてきて、いつになく優しいキスをくれた。



……結局、私にできることは、どれだけ淋しくても、待つことだけなのよね。

でも同じ待つなら、時間を有効に使いたい。

私はコツコツと小門家の会社に役立ちそうな資格試験を受けて、公的なスキルを上げることに勤しんだ。

薫くんは、中間テスト期間も、期末テスト期間も、禁止のはずの部活に励んだ……それでも成績は上位だってゆーんだから、さすがだわ。



そうして迎えた夏休み。

薫くんたちは、一足先に九州へと遠征した。

一週間ほどのぷち遠距離恋愛。

残念ながらネット環境も整わない古い旅館に滞在してるらしく、通信手段は個々のスマホのみ。

正直なところ、連絡がくるとは期待してなかった。

何と言っても、薫くんはまだ一年生。
スタメンとは言え、雑用もあれば、先輩がたの目もあるだろうな……と、あきらめていた。

でも、日に何度もラインや短い電話をくれた。

……意外だった。

「普段より、マメに連絡くれるみたい。」

うれしくてそうからかうと、薫くんは素直に認めた。

『あかんねん。不安とか、淋しいとかじゃないけど……恋しいねん。』

うわぁ……。
どんな顔して、そんなこと言ってるんだろう。

ドキドキしてくる。

「……早く、逢いたいね。」
心からそう言った。

『ああ。早く、桜子が欲しい。』

……薫くんも、心からそう言ってくれてるのがよくわかった。